GA4経験者向け Adobe Analytics基礎知識100選

権限、レポートスイート設計、データ保持、API

設定に関する基礎知識(20項目)

レポートスイートの概念

レポートスイートはAdobe Analyticsにおけるデータの集約単位で、GA4の「プロパティ」に相当しますdata.makoto-shimizu.com。1つのAdobe Analytics契約で複数のレポートスイートを作成でき、各レポートスイートごとに独立したデータセットを保持します。UAのビューのようにサイトやドメイン単位で分けることもできますが、最近では1つのグローバルレポートスイートに全データを集約し、仮想レポートスイートで必要に応じてデータを分割する運用が主流ですexperienceleague.adobe.com。レポートスイートごとにタイムゾーンや通貨、トラッキングコード設定などの基本設定が行われ、Adobe Analyticsの全てのレポートやワークスペース分析は選択したレポートスイートのデータに対して実行されます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/c-new-report-suite/t-create-a-report-suite.html

仮想レポートスイート(データビュー)

仮想レポートスイート(VRS)は1つのレポートスイート内のデータを特定の条件でフィルタリングし、あたかも別のレポートスイートであるかのように扱う機能ですexperienceleague.adobe.com。GA4には「ビュー」が存在しませんが、Adobeではグローバルなレポートスイートに全データを集約し、各部署・サイト向けに仮想レポートスイートを作成してアクセス権を制御することで、ビューのような分割分析を実現しますexperienceleague.adobe.com。仮想レポートスイートは元データをリアルタイムには反映しないなどの制限がありますがexperienceleague.adobe.com、過去データも含め後から定義でき、二次的なサーバーコール費用も発生しないメリットがありますexperienceleague.adobe.com。大規模サイトでは、まず1つのレポートスイートで全データを収集し、仮想レポートスイートで国別・ブランド別などに分割する設計が推奨されます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/virtual-report-suites/vrs-about.html

eVar(コンバージョン変数)の役割

eVarはAdobe Analytics特有のコンバージョン変数で、GA4のカスタムディメンションに相当しますa2guide.jp。eVarは訪問者のアクションから発生する任意の値を保持し、指定した有効期限までその値を保持し続けるのが特徴ですa2guide.jp。例えば広告キャンペーンIDや内部検索キーワードなどをeVarに設定すると、ユーザーがその後別ページに移動したり後日コンバージョンしても、eVarの値が残存期間中であればそのコンバージョンにクレジット(貢献)を与えることができます。これはGA4での「セッションスコープ」「ユーザースコープ」のカスタムディメンションに近い概念ですが、Adobeでは有効期限(例:訪問終了まで、購入イベント発生まで、n日間など)と割り当て(アトリビューション)(例:最後の値/最初の値/線形)を細かく設定できる点が大きな違いですexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。eVarにより「起因と結果」を追跡でき、コンバージョン(成功イベント)に至る前のユーザーの属性や行動を分析する際に用いられますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/edit-report-suite/conversion-variables/conversion-var-admin.html

sProp(トラフィック変数)の役割

sPropはカスタムトラフィック変数とも呼ばれ、GA4におけるイベントパラメータ(ヒット単位のカスタムディメンション)に相当しますa2guide.jp。sPropの最大の特徴は有効期限を持たないことですpersol-bd.co.jp。データが送信されたヒット(ページビューやイベント)にだけその値が適用され、次のヒットには持ち越されません。したがって、単純なページごとの属性(例:ページカテゴリ)や、その瞬間ごとの計測値(例:各ページでの内部検索回数など)を計測するのに適しています。さらにsPropはパス分析(訪問者のページ遷移経路の分析)やリアルタイムレポートに使用できる点も特徴ですpersol-bd.co.jppersol-bd.co.jp。GA4では全てのイベントパラメータがヒット単位ですが、Adobeでは一時的な値を扱う場合はsProp、コンバージョンまで値を保持したい場合はeVarと役割が明確に分かれています。この違いにより、Adobeでは計測前に各変数を設計しておく必要がありますが、その分分析時に柔軟な切り口を持てますa2guide.jp

参考画像:https://www.persol-bd.co.jp/service/salesmarketing/s-smkt/column/webanalytics9/index.html

成功イベント(コンバージョン指標)の設定

成功イベント(サクセスイベント)はAdobe Analyticsでのコンバージョン指標で、GA4における「コンバージョンイベント」に相当しますa2guide.jp。GA4ではすべてのイベントが基本コンバージョン候補ですが、Adobeでは追跡したい成果(例:購入完了、申込み完了、ボタンクリック)ごとにイベント変数を事前に定義し、実装時にトラッキングコードからそのイベントを送信します。成功イベントには「カウンター(発生回数をカウント)」「数値(数値の合計を記録)」「通貨(金額を記録)」のタイプがあり、イベントごとに適切なタイプを設定します。例えば「購入回数」はカウンター型、「売上金額」は通貨型とします。GA4ではevent_countevent_valueなどのパラメータで計測しますが、AdobeではイベントIDごとに指標としてレポートに表示されます。またAdobeではイベントごとにデフォルトのアトリビューションモデル(通常最後に発生した値にクレジット)が適用されますが、計算指標で柔軟に再計算も可能です。なお、イベントの重複計測を避けるために**シリアライズ(イベントの一意識別子指定)**も設定できます。これは、GA4のイベントID重複防止に似た仕組みです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/calculated-metrics/calculated-metrics.html (※Adobe Analyticsでの指標設定画面)

訪問者IDとユーザー識別方法

Adobe Analyticsにおける「ユニーク訪問者」は、基本的には各端末ブラウザに割り当てられる訪問者ID(ECIDとも呼ぶExperience Cloud ID)によって識別されますa2guide.jp。これはGA4でのクライアントID(デバイスごとのCookie ID)と同様の仕組みです。ただし、GA4がGoogleシグナルズ等によりクロスデバイスでユーザーを推定統合できるのに対し、Adobeはデフォルトではデバイス間でIDを共有しません。複数ドメイン間でも同一人物と見なすには、Visitor IDサービスを用いたファーストパーティCookieの共有や、サイト側でログインIDをAdobeに送信する(Customer IDの実装)などの対応が必要です。またAdobe Analyticsでは「訪問者数(ユニーク訪問者)」と「訪問回数(Visit)」は期間内でのユニークカウントですが、GA4の「ユーザー数」は期間内に重複しないアクティブユーザー数を指し、若干算出方法が異なります。例えばAdobeではCookie削除等で同一人物が複数カウントされる場合があります。重要なのは、Adobeでは同一レポートスイート内でしか訪問者IDは共有されないため、別レポートスイート間でのユーザー統計は単純比較できません(GA4のようなプロパティ横断は標準では不可)。これらの違いを理解し、必要に応じてAdobeでもログインIDによるクロスデバイス計測や、Customer Journey Analyticsといった製品で統合分析を検討します。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics-learn/tutorials/intro-to-analytics/transitioning-from-other-platforms/transition-from-google-analytics.html (※ユーザー識別の比較表)

トラッキングコード実装の概要

Adobe Analyticsのデータ収集は、専用のトラッキングコードライブラリ(AppMeasurementやWeb SDK)がページ上で実行されることで行われます。GA4におけるグローバルサイトタグ(gtag.js)やGoogleタグマネージャ(GTM)の実装に相当します。Adobeではページビューを計測するtrackPageView(従来は s.t() 関数)や、イベント計測に使用するtrackLink(従来は s.tl())といったメソッドを使用し、変数(eVarやprop、イベント)に値を設定して送信します。GA4では自動的にページビューやスクロール、アウトバウンドクリック等が測定されますが、Adobeではデフォルトでは自動計測されないため、要件に応じて実装者が計測コードを埋め込む必要がありますtrans-plus.jp。例えば外部リンククリックやファイルダウンロードも、Adobeではカスタムリンクとして実装しないとデータとして計測されません(ただし最近のWeb SDKでは一部自動収集機能も追加されています)。GA4と異なり、Adobeでは計測項目を事前に設計して実装する必要がある点に注意してくださいa2guide.jp。これは手間ですが、計測後に不要データが混入するリスクを下げ、必要なデータのみを高精度に収集できるという利点でもあります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/implementation/home.html (※Adobe Analytics実装ガイド)

Adobe Launchによるタグ管理

Adobe Launch(正式名称: Adobe Experience Platform Launch)はAdobe社が提供するタグ管理システムで、Googleタグマネージャに相当するツールです。GA4の実装にGTMを使うように、Adobe AnalyticsのトラッキングコードはLaunchを使って管理・配信するのが一般的です。Launch上で「ルール」を設定し、ページビューや特定イベント発生時にAdobe Analyticsの計測コードを発火させます。LaunchはAdobe製品との連携に優れ、拡張機能(Extension)としてAdobe Analytics計測モジュールを簡単に組み込めるほか、他社のマーケティングタグも柔軟に管理できますbusiness.adobe.combusiness.adobe.com。例えばGAタグもLaunchで配信可能です。Launchを用いることで、計測タグの変更・追加がエンジニアのコード修正なしに可能となり、サイト公開後の分析項目追加にも柔軟に対応できます。またLaunchは2023年以降「Adobe Data Collection」の一部として提供され、今後はWeb SDKを介した統合的なデータ収集にも対応しています。GA4経験者は、Launchの概念(プロパティ、ルール、データ要素、拡張機能)がGTMのワークスペース、トリガー、変数、タグに近いことを理解すると習得しやすいでしょう。

参考画像:https://business.adobe.com/jp/products/analytics/tag-management.html

内部トラフィックとボットのフィルタリング

Adobe AnalyticsでもGA4同様に、内部トラフィック(社内アクセス)やボットアクセスの除外が可能です。Adobeではレポートスイート設定の「ボットルール」でIAB公認の既知ボットリストを有効化できますexperienceleague.adobe.com(「既知のボットのフィルタリング」オプション)。これをオンにすると、Adobeが管理するスパイダー/ボットリストに合致するヒットは自動で全レポートから除外されます。また、カスタムボットルールとして特定のUserAgentやIPアドレスを指定して除外することもできますexperienceleague.adobe.com。一方、GA4での内部トラフィックは設定画面でIP指定するだけでしたが、AdobeではIP除外を行う場合、レポートスイートの管理画面で「IPアドレスで除外」を設定するか、収集段階で排除する必要があります。Adobeの場合、内部トラフィックを完全除去する高度な方法として、データ収集時に送信しない、またはAdobe Consultingが提供するVISTAルールで除外するといった手段もあります。手軽な方法としては、内部ユーザーのアクセスにはカスタムHTTPヘッダーやクエリパラメーターを付与し、それを元に仮想レポートスイートでフィルター除外する運用も可能です。GA4のような単純な切替スイッチこそありませんが、Adobeでも運用ルールを定めれば社内アクセスやボット流入を分析から除外し、データクレンジングが行えます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/edit-report-suite/report-suite-general/bot-removal.html

マーケティングチャネルの設定

Adobe Analyticsのマーケティングチャネル機能は、GA4のデフォルトチャネルグループ(Organic SearchやDirectなど)に相当する流入経路分類ですが、Adobeでは事前設定が必要です。レポートスイートの管理画面で「マーケティングチャネルマネージャー」を開き、分析したいチャネル(Organic Search, Paid Search, Display, Direct, Referralなど)を最大25個まで定義しますexperienceleague.adobe.com。初期設定ウィザードにより主要チャネルとルールが自動作成できますが、自社状況に合わせて編集可能ですexperienceleague.adobe.com。各チャネルには処理ルールを設定し、参照元URLやキャンペーンパラメーター、ランディングページURLなどの条件で振り分けますexperienceleague.adobe.com。例えば「参照元にgoogleが含まれ検索クエリが存在する場合はOrganic Search」などです。GA4は自動で流入元を分類しますが、Adobeではこのようにルールベースで定義する柔軟性があります。さらにAdobeではファーストタッチ/ラストタッチの2種類のチャネル指標が自動提供され、初回流入チャネルと直近コンバージョン前の流入チャネルを区別して分析できます。GA4でも初回ユーザーのデフォルトチャネルが提供されますが、Adobeでは期間やキー変数ごとにチャネルの上書き設定も細かく制御できますexperienceleague.adobe.com(例:「直接流入」は他チャネルのクレジットを上書きしない等)。マーケティングチャネルレポートを正しく活用するには実装段階でチャネルルールを整理し、全訪問を漏れなく分類できるように設定しておくことが重要ですexperienceleague.adobe.com

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/edit-report-suite/marketing-channels/c-channels.html

クロスドメイントラッキング

複数の関連ドメイン間でユーザーの行動を一貫して追跡するクロスドメイントラッキングにも、GA4とAdobeで違いがあります。GA4ではMeasurement IDが同じであれば1stパーティCookieを共有できるため、自動的にクロスドメイン計測が行われるケースもあります(またはGTMでリンク設定)。一方Adobe Analyticsでは、基本的にドメインをまたぐとCookieによる訪問者識別子(ECID)が異なる扱いになるため、そのままでは同一訪問者とみなされません。対策としてAdobeのExperience Cloud IDサービスではappendVisitorIDsToという関数や中間リダイレクトページを使い、リンク遷移時にECIDを引き継ぐ方法があります。また、トラッキングサーバーを各ドメインで共通のCNAMEにする(1stパーティCookieを共有する)ことで、異なるドメインでも同一IDを維持する手法もあります。GA4では自動でクライアントIDを引き継ぐオプションが提供されていますが、Adobeではこれらを実装側で考慮する必要があります。クロスドメイン間でデータを統合的に分析したい場合、マルチスイートタグ(同じヒットを複数のレポートスイートに送信)を使ってドメインごとのレポートスイートと統合用レポートスイートの両方にデータ送信する方法もあります。いずれにせよ、Adobeでクロスドメイン計測をする際はGA4以上に計測設計と実装テクニックが必要となります。なおExperience PlatformのCustomer Journey Analyticsを利用すれば、別々に収集したドメインデータを後段で統合分析することも可能です。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/virtual-report-suites/vrs-about.html#id_317E4D21CCD74BC38166D2F57D214F78 (※マルチスイートと仮想レポートスイート比較表)

モバイルアプリの計測

GA4ではWebとアプリの統合計測が特徴ですが、Adobe Analytics単体ではモバイルアプリの直接計測機能はありません(Adobeには別途Mobile SDKやExperience Cloudアプリ計測ソリューションがあります)。Adobeでアプリを計測する場合、Adobe Experience Platform SDK(旧Mobile Services SDK)を組み込み、収集データをAdobe Analyticsのレポートスイートに送信します。Webとアプリを同じレポートスイートに送ることで統合分析は可能ですが、ユーザー識別を統一するにはログインIDを使うなど工夫が必要です。GA4はFirebase SDKとMeasurement IDにより自然にWeb+アプリ統合できますが、Adobeでは実装段階で統合設計を行わないとデータは別々になります。また、Adobeにはモバイルアプリ内の解析機能強化として、アプリのライフサイクル指標(起動回数、クラッシュ回数など)を自動取得する仕組みも用意されています。加えてAdobeは2022年以降、Adobe Analyticsの上位版として複数データソースを統合できるCustomer Journey Analyticsを提供しており、これを使えばアプリデータとウェブデータを統合してより高度なクロスチャネル分析が可能です。GA4経験者は、「Adobe Analytics単体=Web中心、アプリは追加対応が必要」と認識し、必要ならExperience Platform製品との併用を検討します。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/virtual-reports/compare-aa-cja.html (※Adobe AnalyticsとCJAの比較)

リアルタイムデータの取得

Adobe Analyticsにもリアルタイムレポート機能がありますが、GA4と比べて制限があります。GA4では「リアルタイム」画面で直近30分間のユーザーやイベントを詳細に確認できますが、Adobeのリアルタイムレポートはレポートスイートごとに最大3つまでの指標・ディメンション組み合わせを定義し、1分単位の集計を表示するものですexperienceleague.adobe.com。例えば「直近15分の上位ページ閲覧数」などは可能ですが、自由に任意の次元・指標をリアルタイムに組み合わせて分析することはできません。また、Analysis Workspace自体は標準で約~30分遅延の「当日データ(current data)」を表示します。GA4のように数秒内のヒットが即UIに現れるわけではなく、通常Adobeではヒットからレポート反映まで数分~最大約15分程度のラグがあります。実装直後の確認やキャンペーン公開直後の動向監視には、Adobeのリアルタイムレポートを設定しておくと便利ですが、表示できる行数や組み合わせに限りがある点に注意が必要ですexperienceleague.adobe.comex-ture.com。GA4に慣れたユーザーはAdobeの「リアルタイム」の粒度・自由度が低いことを念頭に置き、必要に応じてAdobeのストリーミングAPIや顧客ジャーニー分析製品で補完します。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/edit-report-suite/realtime/realtime-reports.html

データ保持期間とデータ制限

Adobe Analyticsでは基本的にデータの保持期限がありません。契約中は過去の全データにアクセスできます(サーバーコール上限内で)。一方GA4では無料版でユーザーレベルデータの保持期間が最長14か月(有料GA4 360で14か月以上設定可能とのアップデートもあり)という制限があります。またGAは無料版で月間ヒット数制限なども存在しました。Adobeには月間あるいは年間のサーバーコール契約量がありますが、それを超えない限りデータ量によるサンプリングは発生しません。Adobe AnalyticsのUI上では基本的に非サンプリングで全データを集計します(GA4もエクスプロレーションではサンプリングが発生しにくいですが、標準レポートでは高カード項目に「(other)」が出る場合があります)。Adobeにも大量のユニーク値に対し「Low Traffic(低トラフィック)」として一部集計されない場合がありますが、指標値自体が欠損することはありません。また、Adobeではヒット数が非常に多い場合、一つの訪問を自動的に分割する訪問分割ルール(例:12時間継続時や2,500ヒット超過時)がありますa2guide.jp。GA4でも将来的に類似のセッション分割が起こる可能性がありますが、Adobeは先行してシステムパフォーマンス維持のためのこうした閾値を設けています。総じてAdobeはデータ保持・集計に寛容ですが、契約プランやデータボリュームに応じた実装設計を行い、不要なデータ送信を控えることが重要です。

参考画像:https://data.makoto-shimizu.com/aa_report-suite/#生データを配信するData Feeds (※Data Feedによる生データ出力とGA4の比較)

プライバシー対応(IP匿名化・ITP対策)

プライバシー保護の観点で、GA4とAdobe Analyticsにはいくつか違いがあります。まずIPアドレスの取扱いについて、GA4ではユーザーのIPは自動的に匿名化(収集時にマスキング)されますが、Adobe Analyticsではデフォルトで完全なIPアドレスを収集・使用します。AdobeでIP匿名化を行いたい場合、IPアドレスの匿名化設定をカスタマーケア経由で有効化する必要がありますexperienceleague.adobe.com。次にCookie規制への対応です。SafariのITP(Intelligent Tracking Prevention)ではファーストパーティCookieでも有効期限が短縮されます。Adobeの訪問者ID(ECID)CookieもITPの影響で、ユーザーが7日以上サイトを訪問しないとCookieがリセットされる可能性があります。GA4も同様にSafariでは再訪時に新しいクライアントIDとなりやすく、双方で再訪ユーザー数が過小計測される傾向があります。AdobeではITP対策として、短期Cookie期限に対応するVisitor APIのアップデートや、ローカルストレージへのID保存、または「declared ID」(ログインIDを使用したID引き継ぎ)を組み合わせることを推奨していますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。加えて、AdobeはExperience Platform上でPrivacy APIを提供し、個人データの削除要求(GDPR/CCPA対応)に応じて特定訪問者の分析データを削除する仕組みもあります。GA4経験者は、Adobeではプライバシー対策が自動ではなく設定・運用でカバーする部分が多いと認識し、クッキー有効期限やオプトアウト対応などをプロジェクト開始時に確認する必要があります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/bot-removal/analytics-tools.html (※Adobeでのプライバシー対応例)

マルチスイートタグとロールアップ

マルチスイートタグ(MST)とは、1つのページビューやイベントヒットを同時に複数のレポートスイートへ送信する設定です。例えば企業全体のグローバルレポートスイートと、国別のレポートスイートの両方にデータを送ることで、全体集計と国別詳細を並行して取得できますexperienceleague.adobe.com。GA4では一つのプロパティにしかデータ送信しないのが基本で、似たことをするにはサーバサイド連携やBigQuery統合が必要ですが、Adobeではタグ実装上の設定で容易に実現できます。ただしMSTを使うとヒットごとにカウントされるサーバーコール数が増加するため、契約コスト面では注意が必要です(2つのレポートスイートに送ればコール数2倍となる)experienceleague.adobe.com。近年は前述の仮想レポートスイートで代替できるケースが多く、MSTの利用は減ってきていますex-ture.com。一方、ロールアップレポートスイートという機能も過去には提供されていました。ロールアップは複数レポートスイートの集計値のみを持つ特殊なレポートスイートで、詳細な次元は扱えない代わりにサーバーコールを消費せず横断集計できました。しかし現在Adobeではロールアップ機能は一般提供されておらず、代替としてデータビュー統合にはData WarehouseやCustomer Journey Analyticsを提案しています。GA4しか経験のない方は、Adobeではまず1ヒット=1レポートスイートへの送信が基本だが、要件次第で複数送信も可能、と覚えておくとよいでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/virtual-report-suites/vrs-about.html (※仮想レポートスイートとマルチスイートの概念図)

タイムゾーンと通貨の設定

Adobe Analyticsではレポートスイートごとにタイムゾーン通貨を設定できますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。GA4はプロパティ単位で1つのタイムゾーンを設定しますが、Adobeでは複数国のサイトを別レポートスイートに分け、それぞれ現地時間帯に合わせることが可能です。例えば日本サイトのレポートスイートはJST(UTC+9)、米国サイトはPSTといった設定ができます。これにより、日付別レポートの区切りを各国の深夜0時に合わせることができます(グローバル統合レポートでは統一されたタイムゾーンとなります)。通貨設定については、各レポートスイートに基軸通貨を指定できますexperienceleague.adobe.com。ECサイトの場合、送信される売上額はこの基軸通貨に換算されて蓄積されます。AdobeのJavaScriptコードではcurrencyCode変数でトランザクションごとに通貨コードを指定でき、たとえばページ上の通貨がUSDならcurrencyCode="USD"として送信すると、レポートスイートの基軸通貨(例えばJPY)に当日の為替レートで自動換算して保存されますexperienceleague.adobe.com。GA4でもイベントごとに通貨パラメータを付与できますが、Adobeでは為替レートをAdobe側が管理している点が異なります。GA4のレポート表示通貨は後から変更可能ですが、Adobeではデータ保存時に換算されるため、基軸通貨は初期設定が重要です。タイムゾーンや通貨は一度設定すると後から変更するとデータ解釈が難しくなるため、Adobe導入時にGAの設定を確認しつつ正しく決めておきます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/admin-tools/manage-report-suites/c-new-report-suite/new-report-suite.html#base-currency

データ抽出とAPI活用

Adobe AnalyticsではGA4のBigQueryエクスポートに相当するData Feed機能や、ワークスペースを経由しないData Warehouse機能を利用できます。Data Feedは、未加工のヒットデータを毎日一括でS3やFTPにTSV形式で吐き出す機能で、GA4→BigQueryよりも前処理の少ない生データが取得できますdata.makoto-shimizu.com。その代わり利用側での前処理コストがかかりますが、柔軟な再集計が可能です。GA4ではBigQueryで半加工データ(イベントとパラメータの展開済み形式)が提供されますが、AdobeのData Feedは各ヒットのパラメータがそのまま列として出力される点が異なりますdata.makoto-shimizu.com。またAdobeにはReporting API 2.0が提供されており、PythonやJSからワークスペース相当のクエリを実行してデータを取得できます。GA4のデータAPIと同様に、クエリでディメンションや指標、フィルターを指定してJSONやCSVで受け取れます。AdobeのAPIはリアルタイム性や抽出上限にも優れており、大量データのバッチ取得も可能です。さらにAdobeのData Warehouse機能はUIでクロス集計レポートを定義してメールやFTPで受領できるサービスです。GA4には標準でこのような機能はないため、Adobe特有のデータ抽出手段として覚えておくとよいでしょう。いずれにせよ、Adobeでは生ログからの再集計が必要な場合はData Feed、集計レポートの自動抽出はData Warehouse、APIによるオンデマンド取得はReporting APIと、用途に応じて活用します。GA4経験者にとってAdobeのエクスポート手段は豊富ですが、都度設定やスクリプトが必要な点に注意してください。

参考画像:https://data.makoto-shimizu.com/aa_report-suite/#生データを配信するData Feeds

レポートビルダー(Excel連携)

Adobe AnalyticsにはReport Builderと呼ばれるExcelアドインがあり、Excel上からAdobeのデータを動的に取得・更新できます。これはGA4におけるGoogleスプレッドシートアドオンやLooker Studio連携に近いイメージですが、Adobe版はネイティブにExcelに組み込まれています。レポートビルダーを使うと、Excelのセル上でAdobeのディメンションや指標を指定し、定期的にデータをリフレッシュしたり、複雑なレポートをExcelで作成・共有することが可能です。マーケティング担当者向けに月次レポートを自動配信したい場合、Excelテンプレート+Report Builderによるデータ自動更新という運用がよく取られます。GA4ではLooker Studioでダッシュボード化するケースが多いですが、Adobe利用企業ではExcel帳票文化が根強い場合、Report Builderの需要が高いです。Report BuilderはAdobe IDでログインし、利用できるデータはユーザーの権限に依存します。またWindows版Excelで長らく提供されてきましたが、2024年にクラウド対応の新バージョンもリリースされ、MacやWebでも利用可能になりましたexperienceleague.adobe.com。GA4経験者は、このようなAdobe独自のExcel連携ツールが存在することを知っておき、必要に応じてインストール・活用できるように準備すると良いでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/report-builder/getting-started.html

基本指標定義の違い(訪問・訪問者など)

Adobe AnalyticsとGA4では、一見似た指標にも定義の違いがあります。代表例として、**訪問(Visit)**はGAのセッションとほぼ同じ概念で、30分間の非活動で区切られる点も共通ですa2guide.jp。ただAdobeでは追加で「連続12時間活動」や「2,500ヒット超過」でも強制的に訪問が区切られますa2guide.jp。**訪問者(Unique Visitor)**は基本的にクッキーIDベースのユニーク数で、GA4のユーザー数に相当しますa2guide.jp。ただしGA4はクロスデバイス統合でユニークユーザー数を算出するのに対し、Adobeはレポートスイート内のみでカウントするため、異なるデバイスでは別訪問者として計上されます。ページビューは両者ともページ閲覧回数ですが、GA4ではページビューもイベントとして扱われる点が異なりますa2guide.jp(Adobeでは専用のページビューヒットとして処理)。直帰(Bounce)はAdobeではシングルヒットの訪問数として計測され、直帰率も「直帰訪問数/合計訪問数」で計算可能です。一方GA4では直帰率という指標が廃止され、エンゲージメント率で代替しています。エンゲージメント率は「10秒以上・コンバージョン発生・複数ページのいずれか該当セッションの割合」で、概念が異なります。AdobeでGA4類似のエンゲージメント指標を見るには、10秒未満滞在の訪問を除外するセグメントを作るなどの工夫が必要です。また平均滞在時間もGA4はエンゲージメントタイム(フォアグラウンド計測時間)ですが、Adobeはページ間のタイムスタンプ差分で計測するため、最後のページ滞在は0とみなされます。これらの定義差によって、例えば「ユーザー数」や「平均セッション時間」などがGA4とAdobeで異なる値になることがあります。会議で数値の違いを指摘された際には、指標定義の違いに起因する可能性を説明できるよう準備しておきましょうa2guide.jpa2guide.jp

参考画像:https://a2guide.jp/aa-vs-ga/ga4経験者のための-adobe-analytics-用語・データモデル比較ガイ/ (※主要指標の対応表)


解析レポートに関する知識(80項目)

Analysis Workspaceの基本UI

Analysis Workspace(ワークスペース)はAdobe Analyticsの主要な分析UIで、GA4の「探索(Explore)」に相当します。Workspaceの画面構成は、大きく左パネル(コンポーネントパネル)と中央キャンバスに分かれていますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。左パネル上部にはパネル(Panels)ビジュアライゼーション(Visualizations)、**コンポーネント(Components)**などの切り替えタブがあり、それぞれ分析に必要な要素をドラッグ&ドロップでキャンバスに配置できますexperienceleague.adobe.com。例えばコンポーネントタブにはディメンション、指標、セグメント、日付範囲といった要素が一覧表示されますexperienceleague.adobe.com。中央のキャンバスが実際のレポート作成エリアで、ここにテーブルやグラフを配置して分析を組み立てますexperienceleague.adobe.com。GA4の探索と似ていますが、Adobe Workspaceは複数のタブ(パネル)を1つのプロジェクト内に持てる点が異なります。一つのWorkspaceプロジェクトには複数パネルを作成でき、それぞれ独立したフィルターやレポートスイート、表示形式を持てますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。また上部メニューからはプロジェクトの保存・共有、Undo/Redo、PDFエクスポートなど各種機能にアクセスできます。GA4経験者はまずWorkspace UIのレイアウトと機能ボタンに慣れ、ドラッグ&ドロップ中心の操作感を掴むと良いでしょう。直感的なUIですが機能が豊富なため、各パネルの役割を理解することが重要です。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/home/analysis-workspace-overview.html#interface (※Workspaceインターフェイスの説明図)

プロジェクトとパネルの関係

Workspaceではプロジェクト(Project)が分析ワークブックのような単位であり、その中に複数のパネル(Panel)を配置できますexperienceleague.adobe.com。各パネルは一つの分析タブのようなもので、GA4の探索における「タブ」に近い感覚です。異なるパネル間ではデータソース(レポートスイート)や適用セグメント、日付範囲を変えることができますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。例えばパネル1で「サイト全体の月次トレンド」、パネル2で「特定セグメントの詳細分析」といった具合に、一つのプロジェクト内に複数の視点のレポートを用意できます。パネルは左上の「+」ボタンまたは左パネルの「パネル」メニューから追加しますexperienceleague.adobe.com。また、一つのパネル内にも複数の可視化(テーブルやグラフ)を配置できます。GA4では1つの探索に複数のタブを用意できましたが、Adobeではプロジェクト内にパネルを作り込むイメージです。なお各パネルごとに選択できるレポートスイートは一つですexperienceleague.adobe.com。したがって異なるサイトやアプリのデータを同一パネルで混ぜることはできません(別パネルにすれば同一プロジェクトで並べて見ることは可能です)。このパネル構造により、Adobeでは一つのプロジェクトで包括的な分析レポート(多角的な視点をまとめたもの)を作成し、共有することができます。GA4ユーザーはまずパネル=分析タブという認識を持ち、状況に応じてパネルを追加する習慣をつけるとWorkspaceを効果的に使えます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/panels/panels.html#panel-types

複数レポートスイートの利用

Analysis Workspaceでは一つのプロジェクト内で複数のレポートスイートのデータを扱うことも可能です。ただし前述の通り、一つのパネル内では単一のレポートスイートしか選択できませんexperienceleague.adobe.com。複数のレポートスイートを比較・併用したい場合、パネルを複数用意してそれぞれ別のレポートスイートに切り替えます。例えば、パネルAは「PCサイトのレポートスイート」、パネルBは「スマホサイトのレポートスイート」と設定して並べることで、両データを一目で比較できます。GA4では異なるプロパティのデータを同一UI上で比較することは標準ではできませんが、Adobeではログイン中にアクセス権のある全レポートスイートをドロップダウンで切り替えられますexperienceleague.adobe.com。さらに、Workspaceにはクロスレポートスイート分析として、複数のパネルを組み合わせCSVエクスポートして外部で統合する、またはExperience Cloud全体で共有IDを実装してCustomer Journey Analyticsを使う、といった手法もあります。通常の利用範囲では、異なるサイトやアプリの分析をそれぞれ別パネルに作成し、一つのプロジェクトとして経営層に報告資料をまとめるケースが多いです。Adobeで複数レポートスイートを扱う際は、同名の指標・次元でも意味が異なる場合がある(例:レポートスイートごとに目標の定義が違う)ため注意しなければなりません。Workspaceではパネルごとにレポートスイート名が明示されますexperienceleague.adobe.comので、レポート閲覧者にもどのデータか伝わりやすくなっています。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/panels/panels.html#report-suite (※パネルとレポートスイートの関係)

自由形式テーブルの作成

自由形式テーブル(Freeform Table)はWorkspaceで最も基本となる分析コンポーネントですexperienceleague.adobe.com。GA4の探索でディメンションと指標をクロスタブにドラッグして表を得る操作と同様に、Adobeでは左パネルの「ディメンション」を行(Rows)にドラッグし、「指標」を列(Columns)にドラッグすることで自由形式テーブルが作成されます。初期状態では新規パネルに1つのフリーフォームテーブル(全体指標のサマリー行)が自動で配置されます。例えば「ページ」ディメンションを行にドラッグし、「訪問数」「閲覧数」指標を列にドラッグすると、「各ページの訪問数と閲覧数」の表がリアルタイムに生成されます。GA4探索との違いは、Adobeのテーブルはドラッグ操作だけでどんどんブレイクダウンして深掘りできる点です。行の特定値を右クリックしてさらに下位ディメンションでブレイクダウンすることもできますし、指標列を追加することで複数の数値を並べて比較できます。テーブル作成時に必要なデータはサーバーからオンデマンド取得されるため、ドラッグ後数秒で結果が表示されます(データ量により多少時間がかかる場合あり)。また、テーブルにはデフォルトで合計行(Total)やその他の集計行も表示されます。Excelピボットの感覚で対話的に分析を進められるため、Adobeでは「まずフリーフォームテーブルを作り、そこから必要に応じて可視化やフィルターを適用する」という流れが基本です。GA4ユーザーも似た操作感ですが、Adobeの方がインタラクティブにドリルダウンできるので積極的にテーブル上で右クリックメニューなどを試すと良いでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/build-workspace-analysis/freeform-analysis.html

ディメンションのブレイクダウン

Adobe Analyticsの強力な機能の一つがブレイクダウン(Breakdown)です。ブレイクダウンとは、あるディメンションの値ごとに別のディメンションで詳細を表示する操作を指します。例えば「参照元サイト」ごとに「ランディングページ」の内訳を見る、といった分析がブレイクダウンで実現できます。Workspaceでは、自由形式テーブル上で任意の行(ディメンション値)を右クリックし「ブレークダウン」から次のディメンションを選択するだけで、その行の下に階層的に内訳が挿入されます。GA4の探索ではディメンションを2軸目に設定してもフラットなテーブル表示ですが、Adobeではネスト構造で表示されるため、一目で階層関係が分かります。ブレイクダウン操作は何度でも行えるので、例えば「デバイスタイプ」→その下に「参照元」→その下に「キャンペーン名」と3段階のネストも可能です(以降無制限に深掘り可experienceleague.adobe.com)。ブレイクダウンされた行にはインデントが付き、上位値との関連性が示されます。GA4では同様の多層分析をするには別タブでフィルタするなど手間がかかりましたが、Adobeでは一つのテーブル内でツリー構造的に表現できます。ただし、ブレイクダウン可能な組み合わせはデータ収集時の変数設定に依存します。例えば「参照元」と「ランディングページ」は同じヒットに紐づくためブレイクダウンできますが、「購入日」と「初回参照元」のように異なるスコープだと難しい場合があります。その点を除けば、Adobeのブレイクダウンは非常に柔軟で、GA4に比べ分析の自由度が高いです。GA4経験者はまず単純なテーブルを作成し、右クリック→ブレイクダウンを試してみるとAdobe流の深掘り分析の感覚を掴めます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/use-breakdowns.html

複数ディメンションのネスト

前項で触れた通り、Workspaceの自由形式テーブルでは複数のディメンションをネストして表示できます。GA4のピボットテーブル機能に近いものですが、Adobeの場合はネストされたディメンションが行階層として展開される点が特徴です。例えば、一つのテーブルで「国 > 都道府県 > 市区町村」と3階層の地理的ディメンションをネストすれば、国ごとに都道府県、その下に市区町村の指標がツリー状に表示されます。これにより、全体から詳細までを一望でき、閲覧者はツリーを展開/折りたたみしながらデータを確認できます。複数階層を設定する方法は、任意の行で右クリックし次のディメンションをブレイクダウンするか、左パネルから直接複数ディメンションを順にドラッグして行エリアに配置するだけです。順番は後からドラッグで入れ替えることも可能です。GA4では2階層目以降のディメンションは「行ごとに新しい列を作る」形式でしたが、Adobeでは縦方向に連結されるため、Excelのアウトライン機能のような見た目になります。ネストが深くなるほど分析結果も複雑になりますが、Adobeでは展開しすぎによるパフォーマンス低下に注意が必要です(非常に多くの組み合わせを展開すると処理が重くなることがあります)。とはいえ通常の使用範囲では3~4階層程度はスムーズに展開できるため、GA4では見落としていた細かな組み合わせもAdobeなら一つのテーブルで可視化できます。特にサイト構造が明確な場合やキャンペーンの多段分析に有効です。なお、ブレイクダウンした行のみCSV出力することもできますので、必要な深度だけ展開してエクスポートする活用法もあります。

参考画像:https://www.persol-bd.co.jp/service/salesmarketing/s-smkt/column/webanalytics9/index.html#具体例 (※propとeVarの両方でサイト内検索を集計する例。表にネスト構造のキャプチャあり)

ディメンション値のフィルタリング

Workspaceではディメンション値をフィルタリングしてテーブル表示を絞り込むことができます。GA4の探索で「フィルター」タブから条件設定するのと同様ですが、Adobeではより直感的に操作できます。一つはテーブル上部の検索バーを使う方法です。自由形式テーブルをクリックすると上部に検索ボックスが現れ、そこにキーワードを入力すると行項目を動的にフィルタリングします。例えばページの一覧に「/products/」を含むページだけを表示したい場合、検索バーに「products」と入れると該当行のみが残ります。このフィルタは一時的なもので、削除すれば全行が戻ります。もう一つはコンテキストフィルターで、例えば特定のディメンション値を選択して右クリック→「選択した項目でフィルター」を選ぶと、その値のみを含むテーブルに絞り込みます。GA4の「フィルタ」操作に近いですが、Adobeでは複数選択した状態でフィルタを適用することもできます(CtrlキーやShiftキーで複数行をハイライトしてから右クリック→フィルター)。さらに、最近のWorkspaceには動的ドロップダウンフィルターというGUI要素も追加されていますimplementdigital.com。これはパネル上部のフィルタドロップゾーンにディメンションをShift+ドラッグすることで設置でき、レポート閲覧者がそこから値を選択すると全可視化にフィルタが適用される仕組みですimplementdigital.com。複数のドロップダウンを連動させることもでき、例えば国フィルタで日本を選ぶと地域フィルタに日本の都道府県だけが表示されるといった絞込みが可能ですimplementdigital.com。GA4にはない便利機能で、共有先がインタラクティブに条件を変えられるダッシュボードとして機能します。このようにAdobeでは様々なフィルタリング手段が用意されており、その場でのデータ探索が迅速に行えます。

参考画像:https://www.implementdigital.com/column/adobe-experience-cloud/how-to-use-dynamic-dropdown-filters-in-workspaces-in-adobe-analytics/ (※動的ドロップダウンフィルターの使用例スクリーンショット)

指標の比較と複数列

Workspaceでは一つのテーブルに複数の指標列を並べて表示できます。GA4探索でも複数指標を選択できますが、Adobeではさらに柔軟で、異なるセグメントを適用した指標列異なる期間を設定した指標列も自由に組み合わせられます。基本操作は、左パネルの「指標」リストから指標を複数選択して列エリアにドラッグするだけです。例えば「訪問数」「閲覧数」「コンバージョン数」を3列で表示すれば、それぞれの指標でランキングを比較できます。また、同じ指標を2列配置し、一方に前年同月セグメントをドラッグすれば「今年の訪問数」と「昨年同月の訪問数」が並び、手軽に前年比較が可能です。GA4の探索では期間比較は単一指標の増減%表示に留まりますが、Adobeでは列ごとにセグメントや日時を変えた指標を好きなだけ並べられるのが大きな利点です。さらに各列は個別にソートが可能ですので、列ヘッダーをクリックすることで例えば「閲覧数で降順ソート」「コンバージョン数で降順ソート」と切り替えられます。これにより、どの指標で見ても上位の項目か、指標間で順位が異なる項目は何か、といった分析が容易になります。列幅もドラッグで調整でき、数値の小数点以下桁数も設定で変更できます。Adobeはデフォルトで各列に合計が表示されますが、必要に応じて列単位で「%表示」「増減表示」などに切り替えることもできます(右クリックメニューから計算指標を適用する方法もあります)。総じてAdobeのテーブル列操作はExcelライクで自由度が高く、GA4に比べ多面的な比較表を一画面で実現できます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/freeform-table.html (※フリーフォームテーブルに複数指標を配置した例)

グラフへの切り替え

Workspaceでは、テーブルで得たデータをさまざまなグラフ(Visualization)に切り替えて可視化できます。GA4でも探索結果をグラフ表示できますが、Adobeの方が種類やカスタマイズ性が豊富です。基本的な操作は、テーブルの右上に表示されるチャートアイコンをクリックしてグラフタイプを選ぶか、左パネルの「ビジュアライゼーション」タブからグラフ種類をドラッグしてキャンバスに追加する方法です。例えば時系列データを折れ線グラフ(Line)で表示したり、カテゴリ比較を縦棒グラフ(Bar)にする、といった操作がワンクリックで可能ですexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。既存のテーブルを選択してからグラフを追加すると、そのデータを反映したグラフが自動作成されます。また、一つのパネル内でテーブルとグラフを並べて配置することもできるため、数値表とビジュアルを同時に確認・共有できます。Adobeのグラフ種類は、折れ線・棒以外にも円(ドーナツ)、エリア、散布図、ヒストグラム、積み上げエリアなど多数あり、データの特性に応じて選べますexperienceleague.adobe.com。たとえば割合構成を見るならドーナツ、分布を見るならヒストグラム、といった具合です。グラフに切り替えた後も軸の指標変更や凡例クリックで系列の表示切替、スケール変更、アノテーション追加など多彩な編集ができます。GA4では提供されない標準偏差帯(信頼区間)や移動平均線を重ねることも可能です。ビジュアライゼーションを切り替える際、Adobeはデータ構造を自動で再解釈してくれるため、多少データの形が合わなくても選べるグラフでは表示されます(例:2列以上の時系列データでも重ね折れ線として描画)。GA4ユーザーは、Adobeでは「表からグラフへの移行」がスムーズであることを活用し、数値で傾向を掴んだら即グラフで視覚化する、といった分析を繰り返すとよいでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/visualizations.html

期間(日時)の選択と比較

Workspaceでの日付範囲の設定は、画面右上のカレンダーピッカーまたは左パネルの「日付範囲(Date Ranges)」コンポーネントで行います。GA4と同様、カレンダーUIで開始日・終了日を指定可能ですが、Adobeでは複雑な期間もカスタム日付範囲として保存できます。例えば「直近30日」「昨年同月」「今四半期」など頻繁に使う期間をコンポーネントとして定義しておき、ドラッグ&ドロップで適用できます。さらにGA4との大きな違いは、一つのWorkspaceプロジェクト内で複数の異なる期間を同時に扱えることです。たとえばパネルAは「今年1月~6月」、パネルBは「昨年1月~6月」として並べることができますし、同一パネル内でも指標列ごとに異なる期間を設定した計算指標を置けば期間比較が可能です。簡単な期間比較であれば、任意の指標列を右クリックして「期間を比較」を選ぶことで、直前期間や前年同期を自動追加してくれる機能もあります。GA4探索では期間比較すると増減%が表示されるのみでしたが、Adobeでは2つの期間の数値を並列表示したり、差分指標を計算する自由度があります。実際、Adobeでは「昨年比増減」を一つの指標(計算指標)として定義することも可能で、これを使えば棒グラフ上に増減の矢印(サマリーチェンジ)を表示することもできます。またAdobeの日付範囲はGAと違い保存時点の相対期間として定義でき、例えば「最新の完了月」という範囲を作っておけば、月が変わるたびに自動で前月に切り替わります。GA4の「比較」に相当する機能も、Adobeではセグメントを用いることで、例えば「期間=2023年」「期間=2022年」の2つのセグメントを作りパネルに適用することで過去年比較ができるなど、発想次第で柔軟です。注意点として、Adobeは日付の粒度(日時/日/週/月/四半期/年)も自動ではなく、ディメンションとして指定する必要があります。トレンド分析では「日次(Day)」ディメンションを行に使いますが、週単位にしたい場合は「週」ディメンションを使用します。これはGA4が自動集計する部分を明示的にコントロールできる利点とも言えます。GA4経験者はAdobeのカレンダーUIと日付範囲コンポーネントにまず慣れ、必要に応じてカスタム期間を登録しておくと分析が捗ります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/components/date-ranges.html

セグメントの概念と作成方法

GA4のオーディエンスや比較に相当するのが、Adobe Analyticsのセグメントです。セグメントとは全データから特定の条件に合致する部分集合(例:モバイルから訪れた新規訪問者)のことです。Workspaceでは左パネルの「コンポーネント」セクションからセグメントをドラッグ&ドロップしてデータを絞り込みます。ドラッグ先によって適用範囲が異なり、パネル上部のセグメントドロップゾーンに配置すればパネル内全体に、その特定のフリーフォーム表やグラフの上にドロップすればそのオブジェクトにのみ適用されますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。新しいセグメントを作成するには、左パネル下部の「セグメント」リストで「+」ボタンを押すか、既存セグメントを右クリックして編集します。GA4のセグメントビルダーと似ていますが、Adobeのセグメントビルダーはヒット(ヒット=ページビューやイベント)、訪問(セッション)、訪問者(ユーザー)の3つのスコープで条件を組み立てます。例えば「訪問者のデバイスタイプがモバイル」や「訪問内で購入イベント発生」など、コンテナを入れ子にして定義しますexperienceleague.adobe.com。条件はAND/ORや否定も組み合わせ可能で、さらには順序指定セグメント(Sequential Segment)として「まずカート追加し、その後購入しなかった訪問」といった時間順序ルールも設定できます。GA4のシーケンスセグメントに相当します。完成したセグメントは保存するとセグメントライブラリに登録され、他のプロジェクトでも利用できますexperienceleague.adobe.com。また承認・共有すれば組織内の他ユーザーと共用も可能です。GA4では探索内の比較セグメントは一時的でしたが、Adobeではセグメントライブラリで一元管理されます。なおクイックセグメントという簡易機能もあり、テーブル上で行を右クリック→「選択範囲からセグメントを作成」で特定値にマッチする即席セグメントをプロジェクト内限定で作成できますexperienceleague.adobe.com。GA4経験者はAdobeのセグメント機能を使いこなすことで、例えば「離脱ページが特定ページの訪問」「特定キャンペーン経由のリピーター」など高度な分析切り口を容易に実現できます。GA4と用語は似ていますが、Adobeの方が柔軟かつ注意深い設計が必要なので、作成後は正しく絞り込まれているか結果を確認する習慣を持ちましょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/segmentation/seg-overview.html

セグメントのスコープ(ヒット/訪問/訪問者)

Adobeのセグメント定義で特に重要なのがスコープ(適用範囲)です。GA4のセグメントビルダーにもユーザー/セッションのスコープがありましたが、Adobeではさらに「ヒット」レベルがあり3段階となっています。ヒットセグメントはページビューやイベント単位で条件を課すもので、例えば「Productページのヒットのみ」を抽出するといった使い方です。一方訪問セグメントはセッション全体に条件を課します。例えば「訪問内で売上が発生した訪問」を作れば、それに該当する全てのヒット(購入以前のページビューも含む)が抽出されます。訪問者セグメントはさらに広くユーザー単位で、例えば「過去に一度でも購入したことがある訪問者」とすれば、そのユーザーの全訪問・全ヒットが対象となります。GA4ではユーザー範囲のセグメントで達成した条件前後も含めるのに似ています。Adobeのセグメントビルダーではこのスコープをコンテナとして視覚的に表現しており、「訪問者コンテナの中で○○がTrue」などとドラッグ操作で構築しますexperienceleague.adobe.com。注意点として、スコープが大きいセグメントほどデータ抽出範囲も広くなるため、例えば「訪問者セグメントAと訪問者セグメントBの差分」を比較するSegment IQでは、想定以上に多くのヒットが含まれて結果が変わることもあります。GA4経験者がAdobeの会議で不慣れを悟られないためには、「Adobeはセグメントの範囲指定が柔軟で、必要に応じてユーザー単位・セッション単位で条件適用を変えられる」点を理解していることを示すと良いでしょう。例えば「それは訪問単位の条件でセグメント化できます」と発言できれば、Adobe固有の概念にも通じている印象を与えられます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/segmentation/seg-apply.html (※セグメントコンテナの図解あり)

セグメントの共有と管理

Adobe Analyticsで作成したセグメントは、組織内で共有することができます。GA4でもアナリストが作成したオーディエンスを他ユーザーと共有できますが、Adobeではさらに細かく共有範囲を指定可能です。セグメントビルダーで保存時に「このセグメントを他のユーザーと共有」にチェックを入れると、Adobe Admin Consoleのプロダクトプロファイル単位で共有できます。例えば「マーケチーム用プロファイルのユーザー全員に共有」等です。またAnalytics管理者がセグメントを**承認(Approve)**すると組織の標準セグメントとして全員の「承認済みセグメント」フォルダに表示されますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。これにより、重要なKPI定義などを全社共通で使えるようにできます。GA4との違いは、Adobeのセグメント共有は「誰にでも(組織全体)」も可能ですが、「特定のユーザー/グループだけ」にも柔軟に限定できる点です。一方でGA4のようにリンクを発行して外部共有する仕組みはなく、Adobeのセグメントは基本的にAdobe Analytics内部でのみ利用されます。また、管理画面の「セグメント管理」では全ユーザーのセグメント一覧や使用状況を確認でき、不要なもののクリーンアップも可能です。例えば退職者が作ったセグメントを管理者が削除する、といった操作ができます。Workspaceでは自分が作成したセグメント、自分と共有されたセグメント、全員に公開されたセグメントがアイコンで区別表示されますexperienceleague.adobe.com。GA4経験者はAdobeではセグメント資産の管理が重要であることを念頭に置きましょう。多数のセグメントが乱立すると混乱を招くため、命名規則を決めたりタグ付け機能を活用して整理するのがおすすめです。会議では、必要に応じて「セグメントを全社共有します」や「承認セグメントにします」と発言できると、Adobe運用にも習熟している印象を与えられます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/segmentation/seg-manage.html

分類機能による値のグルーピング

Adobe Analyticsには分類(Classification)機能があり、収集済みのディメンション値を後からグループ化・再構造化することができます。これはGA4の「カスタムディメンション値のグルーピング」や「コンテンツグループ」に近い概念ですが、Adobeの分類はより柔軟で任意のキーと値のマッピングをアップロードできます。例えば、キャンペーンID(トラッキングコード)ごとに「チャネル種別」「キャンペーン名」などを分類テーブルで関連付けておけば、レポート上でキャンペーンIDを軸にするだけでなく「キャンペーン名別」「チャネル種別別」の集計が可能になります。これにより実装時にはシンプルなコード(IDなど)を送信しつつ、後から意味を付与して分析できる利点があります。GA4では同様のことをするにはデータポータルやBigQueryで処理する必要がありますが、AdobeではUIからCSVアップロードするだけで分類ディメンションが作成され、過去データにも遡及反映されます。また、製品IDに対して製品カテゴリ分類を設定したり、ページURLに対してページセクション分類を設定する、といった活用も一般的です。Adobeの分類にはExcelテンプレートを用いた一括登録(旧称SAINT)やFTP経由アップロード、API連携など手段も豊富です。GA4経験者がAdobeで注意すべきは、分類用のキー変数(元となる値)を実装時に確保しておくことです。分類なしでは分析が難しい粒度の値(例えば商品IDのみでは読みづらい場合)は、後からカテゴリ名などを分類で付与する前提で設計します。分類結果はWorkspaceのディメンション一覧に現れ、通常のディメンション同様に使用できます。例えば「キャンペーンID」の分類として「キャンペーン種別」を作成しておけば、Workspaceでキャンペーン種別ディメンションをドラッグして分析できます。GA4との違いは、Adobe分類はデータを後から付 enrichできる強力な仕組みですが、分類キーの値が一意でないと正しく機能しない点に注意が必要です(同じキーに複数分類は不可)。会議では、「Adobeなら分類機能で柔軟にレポート軸を追加できます」といった提案をすることで、Adobeの強みを示しつつコンサルティング力をアピールできます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/classifications/classifications.html

計算指標の作成

計算指標(Calculated Metrics)はAdobe Analyticsでカスタム指標を作成する機能で、GA4の算術指標作成に相当します。デフォルトで用意された指標(例:訪問数、PV、売上など)を組み合わせたり算術演算することで、新たな指標を定義できます。例えばGA4では標準で「エンゲージメント率」がありますが、Adobeでは「直帰率」を自分で計算指標として作成する、といった使い方をしますsoftbanktech.co.jpsoftbanktech.co.jp。計算指標の作成は、左パネルの「指標」セクションで「+」アイコンをクリックすると計算指標ビルダーが開きますsoftbanktech.co.jp。ここで定義したい指標の式を設定します。操作はドラッグ&ドロップで、使用する既存指標(訪問数など)をキャンバスの「定義」エリアに配置し、演算子(+, -, ×, ÷)や関数(合計, 平均, 分位数など)を指定します。例えば直帰率なら、「直帰数 ÷ 訪問数」の式を組み、パーセンテージ形式に設定しますsoftbanktech.co.jpsoftbanktech.co.jp。定義が終われば名前を付けて保存し、以降その計算指標が左パネルの指標一覧に表示され、他の指標と同様にレポートで利用できますsoftbanktech.co.jp。GA4では一部の割合指標は自動提供ですが、Adobeは手作りする代わりに自由な指標が作れます。例えば「コンバージョン率(注文数/訪問数)」や「1訪問あたりPV数(PV/訪問)」などは定番で、自社KPIに合わせて定義可能です。さらに高度な計算指標として「前年同期比」や「成長率(今年/昨年 -1)」を計算することもできますsoftbanktech.co.jp。これらはGA4ではデフォルト未提供ですが、Adobeでは計算指標で補います。計算指標ビルダーにはif文や複数条件分岐のような高度なロジックはありませんが、必要な場合はセグメントを組み合わせて「〇〇セグメントの指標 ÷ 全体指標」のような式を作ることもできます。作成した計算指標は組織内で共有することもでき(承認して共有すれば他ユーザーも使用可能experienceleague.adobe.com)、またタグ付けして整理も可能です。GA4経験者はAdobeの計算指標ビルダーを活用することで、GAでは手間だったカスタム指標を簡単に増やせる点に注目しましょう。なお、計算指標はリアルタイムレポートでは使用不可という制限がありますが、通常の分析では問題ありません。

参考画像:https://www.softbanktech.co.jp/special/blog/dx_station/2021/0033/#計算指標の作成 (※直帰率の計算指標作成手順のスクリーンショット)

計算指標の活用例(転換率など)

計算指標は様々なKPI算出に応用できます。GA4では提供されない指標も、Adobeなら自作可能です。例えば転換率(Conversion Rate)は典型例で、「コンバージョン件数/訪問数」といった計算指標として定義できます。ECサイトであれば「購入転換率=注文数/訪問数×100%」を設定すれば、任意のディメンション(流入チャネル別など)で購入率を比較できます。同様に離脱率(Exit Rate)も計算指標で算出可能です。Adobeの既存指標に「直帰率」はなく「直帰数」はありますが、前述の通り直帰率も「直帰数/訪問数」で作成できますsoftbanktech.co.jp。他にも平均値の算出に計算指標が役立ちます。例えば「平均ページビュー数/訪問」は「PV ÷ 訪問数」で計算できますし、「平均滞在時間」は「滞在時間総計 ÷ 訪問数」で表せます(Adobeには平均滞在時間指標もありますが、独自定義の平均を出したい場合に有用)。また、複合指標として「エンゲージメントスコア」のように複数の指標を加重平均・スコアリングすることもできます。例えば「PV ÷ 訪問 + 購入数 × 5」といった式でページ毎の総合スコアを出し、ページ価値分析に使うといった応用です。さらに計算指標はフィルター付き指標としても使えます。セグメントをドラッグして適用した計算指標を作れば、「新規訪問からの売上」「リピーターのコンバージョン率」など、特定条件下の指標をワンクリックで再利用できます。GA4では類似分析を毎回フィルタする必要がありますが、Adobeなら一度計算指標化すればどこでも使えます。ただし乱立すると管理が大変になるため、命名に条件を入れるなどして整理しましょう。計算指標ビルダーには上級機能として関数もあります。例えば「累積和」「順位」「分位点」など統計関数が使えるため、売上上位の上位何%が何%の売上を占めるか等も計算指標で可能です。GA4ではこうした統計分析は難しいので、Adobeの強みと言えます。会議では「御社KPIに合わせて計算指標を作成し、ダッシュボード上で自動計算できます」と提案することで、Adobeでの分析カスタマイズ力を示せるでしょう。

参考画像:https://data.makoto-shimizu.com/aa_calculated-metrics/ (※計算指標活用方法についての解説ページ)

カスタム日付範囲の作成

Adobe Analyticsでは任意のカスタム日付範囲を作成して保存できます。GA4でもクイック日付選択はありますが、Adobeではそれをコンポーネント化して再利用できる点が便利です。例えば「直近30日間」「昨年度」「ブラックフライデー期間」など、頻繁に使う期間はDate Rangeコンポーネントとして定義します。作成方法は、左パネルの「日付範囲」セクションで「+」ボタンを押し、カレンダーUIで開始日・終了日または相対期間を設定し、名前を付けて保存するだけです。保存した日付範囲は左パネルに一覧表示され、他のコンポーネント同様にドラッグ適用できますexperienceleague.adobe.com。例えば、プロジェクトのデフォルト期間を過去3ヶ月にしたい場合、「過去90日」というカスタム範囲を用意しておき、パネルの日付範囲ドロップゾーンにドラッグすれば以降自動で直近90日データを表示します。また、相対期間として設定することも可能です(「今日から○日前~今日」など)。GA4のように常に動的に最新期間を表示したい場合、Adobeでも「Rolling Date Range」を使えば現在日時に対して相対的に計算されます。例えば「最新フル月」は「This month minus 1 month」と設定することで、月初~昨日までの1ヶ月分となり、月替わりで自動更新されます。さらに特徴的なのは複数期間の組み合わせも作れることです。Adobeの日付範囲ビルダーではOR/ANDで二つの期間を組み合わせた範囲を定義できます。例えば「今年と昨年の同月を一つの範囲にする」ことも可能で、これはGA4にはない機能です。こうしたカスタム範囲は必要に応じてWorkspaceで列の比較やフィルタに利用できます。GA4経験者にとって、このコンセプトはGAのアドバンス期間設定に近いですがAdobeの方が自由度が高いです。なおカスタム日付範囲は適切な名前を付けて管理しないと増えすぎて紛らわしくなるため、作成後は不要になれば削除する運用も検討しましょう。会議では「特定キャンペーン期間を日付コンポーネント化してすぐ分析できます」など、Adobeならではの柔軟性をアピールできるポイントです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/components/date-ranges.html#create-daterange

年間・期間比較分析の方法

Adobe Analyticsでは前年同期や期間比較を多彩な方法で行えます。GA4では一度に1つの比較しかできませんが、Adobeでは複数の期間を同時に並べて分析できます。最もシンプルなのは、前述のように計算指標複数列を活用する方法です。例えば「今年売上」「昨年売上」の2つの計算指標を作り同じ表に並べれば、各行(商品や流入源など)の年ごとの差を直接比較できます。そのうえで別途「成長率(前年比)」の計算指標(今年/昨年-1)を追加すれば、増減率まで一望できます。GA4ではUI上で増減%は見えますが、任意の軸で並べることは難しいため、Adobeの利点です。また、パネル複製も便利です。あるパネルをまるごとコピーして、日付範囲だけ昨年に変更すれば、同じレイアウトで昨年分のデータパネルがすぐ作れます。あとは2つのパネルを並べて比較するだけです。さらに高度な方法として、AdobeのSegment Comparison (Segment IQ)機能で期間をセグメント化して比較する手もあります。例えばセグメントAを「訪問日が2023年」、セグメントBを「訪問日が2022年」としてSegment IQパネルにかけると、両期間で統計的に差のある指標やランクの違いを自動検出してくれます。これはGA4にはない分析支援機能です。期間比較では季節変動にも注意が必要ですが、Adobeではアノマリー検出(Anomaly Detection)と予測の機能があり、前年トレンドや期待値との乖離を可視化できます。例えば月次売上のライングラフに前年ラインを重ね、さらに各月のアノマリーをマークする、といった分析も可能です。GA4経験者がAdobeで注意すべきは、期間をまたぐユニーク訪問者数など一部指標は単純比較しづらい点です。Adobeのユニーク訪問者は期間が長いほど増える(重複排除するため)ので、年度比較する際は訪問者数でなく訪問数や売上額などを使った方が適切な場合もあります。そうした指標特性も踏まえ、Adobeでは必要に応じて期間別のセグメント(例:「2022年訪問セグメント」)を作成し、そのセグメント内でのユーザー数比較など工夫が求められます。会議で「前年同期比○○%増です」と伝える際も、Adobeでどう算出しているか補足できると説得力が増します(例:「計算指標で前年比を算出しています」など)。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/analysis-workflow/anomaly-detection.html (※アノマリー検出による前年比較例)

基本グラフ(折れ線・棒グラフ)の活用

Adobe AnalyticsのAnalysis Workspaceでは多彩なグラフを使えますが、折れ線グラフ棒グラフは最も基本的なビジュアライゼーションです。折れ線グラフ(Line Chart)は時系列データの傾向を見るのに適しており、例えば日別PVや週別売上を表示してトレンドや季節変動を把握できます。Workspaceで折れ線グラフを作るには、自由形式テーブル上で日時ディメンションが行にあり1つ以上の指標列がある状態で、左パネルの「Visualizations」から折れ線アイコンをドラッグするだけです。自動的に横軸が時間、縦軸が指標の折れ線チャートが描画されます。複数指標を選択している場合は線が複数引かれ色分けされます。グラフ上では凡例クリックで系列の表示切替や、範囲選択してZoomなども可能です。棒グラフ(Bar Chart)はカテゴリ比較に有用で、例えばデバイス別訪問数やページ別CV数などを比較する際に使います。Workspaceでは縦棒・横棒が選べますが、初期設定では縦棒(Vertical Bar)が用意されています。テーブルでカテゴリが行に並び1つの指標列があれば、棒グラフを適用するだけで各カテゴリの値が棒の長さで視覚化されます。上位N項目のみを表示する設定(トップ5など)も簡単に指定できます。GA4の探索でも棒グラフはありますが、Adobeでは色や軸、ラベル表示など細かなカスタマイズ性が高いです。例えば軸タイトルの編集や、値ラベルを棒の上に表示、目標値のラインを重ねる等の調整がGUIで可能です。さらにAdobeでは二軸グラフも作れます。片方の指標を第2軸に割り当て、折れ線と棒を組み合わせた見せ方(例:訪問数を棒、転換率を折れ線で二軸表示)などもワンクリックで設定できます。GA4ではできなかった異なる単位の指標比較が容易になります。折れ線・棒グラフは会議資料やダッシュボードでも頻出する基本チャートですので、Adobeでの作成・調整に習熟しておくと良いでしょう。なお、棒グラフはカテゴリが多いと横軸が密集し見づらくなるため、その場合は水平棒グラフにして縦スクロール可能にする手もあります。Workspaceではチャート領域を広げる、凡例を下に配置するなど自由度もあるので、GA4以上に見栄え良くデータを伝える工夫ができます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/line-bar-charts.html

円グラフ(ドーナツ)の活用

円グラフ(Pie Chart)およびドーナツチャートは、全体に占めるカテゴリごとの割合を示すのに適したビジュアライゼーションです。GAでは標準レポートに円グラフが使われることもあり馴染みがあるでしょう。Adobe Workspaceでもドーナツグラフ(Donut Chart)を利用できます。例えば流入チャネル別のセッション比率や、デバイス別トラフィック構成など、項目が5~10程度までの分割データに向いています。Workspaceで円グラフを作成するには、対象となる自由形式テーブル(カテゴリと指標列が必要)を用意し、Visualizationsからドーナツチャートをドラッグします。自動的に上位5項目+「その他」で構成されたドーナツが描画されますが、プロパティで表示項目数は変更可能です。GA4探索では円グラフを作る機能は限定的でしたが、Adobeではパーセンテージラベルの表示や色のカスタマイズもできます。例えばチャネルA=青、B=緑…とブランドカラーに合わせて編集し、その設定をお気に入りテンプレート化することも可能です。また、ドーナツの内側中央には合計値や選択項目情報を表示できます。ドーナツグラフは割合強調に便利ですが、欠点として項目間の微小な差が視覚的に分かりづらい点があります。その場合は、棒グラフとの併用がおすすめです。Workspaceのひとつのパネルにドーナツと棒グラフを並べ、棒で正確な数値差を示しつつ、ドーナツで全体構成を直感的に伝える形にできます。GA4ダッシュボードではこれを実現するのに工夫が必要でしたが、Adobeでは同一パネルで自由に可視化を配置できるため簡単です。円グラフは項目数が多すぎると「その他」が大きな割合を占めてしまうこともあり、Adobeでは必要なら「その他」をクリックして中身をドリルダウン(別グラフに飛ぶ)することもできます。例えば「その他」セグメントをクリック→別パネルにその内訳ドーナツを表示、といった連携が可能です。GA4ではできないインタラクティブな分析もAdobeなら可能なので、会議では「この円グラフのOthersを詳しく見ることもできます」と実演すると効果的でしょう。ただし円グラフ乱用は避け、必要な場面(構成比の強調)に絞って使うのがベストです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/pie-donut.html

エリアチャートの活用

エリアチャート(Area Chart)は折れ線グラフの下を塗りつぶした形式で、積み上げエリアチャートとしてカテゴリ別の推移や構成変化を示すのに役立ちます。GA4ではあまり見かけませんが、Adobe Workspaceでは積み上げエリア(Area Stacked)グラフが用意されていますexperienceleague.adobe.com。例えばサイト全体のPV推移をデバイス(PC/モバイル)別に積み上げエリアで表示すれば、全体トレンドと内訳の変化を一目で把握できます。積み上げエリアは縦方向に重ねて表示するため、カテゴリごとの貢献度が面積として表現されます。作成するには、行項目が時系列、列に複数カテゴリの指標がある自由形式テーブルを用意し、Visualizationsから「Area Stacked」を適用します。各指標系列が下から順に積算され、上に行くほど値が累積するグラフとなります。色分けされ、凡例にカテゴリが表示されます。GA4では類似の「山積みグラフ」は見当たりませんので、Adobeならではの可視化と言えます。また、積み上げではなく100%積み上げ(割合スタック)の設定も可能です。このモードでは縦軸が常に100%で、各カテゴリの占有率の推移を示せます。例えば月ごとのデバイス割合がどう変化しているか(PCが減りモバイルが増えている等)を描画できます。これはGA4では一度に1期間しか比率が見られないのに対し、Adobeでは時系列で割合変化を表現できるメリットがあります。エリアチャート単体では折れ線と情報量は同じですが、塗りつぶしによって視覚的インパクトが増すため、例えばページ閲覧累積数などを表現する際に使われることがあります。ただしカテゴリが多すぎると色が判別困難になるので、上位3-5カテゴリ程度に留めた方が良いでしょう。Adobeではグラフの色パレットも自由に変更可能なので、カテゴリの識別をわかりやすくできます。積み上げエリアを使用する際は、必ず凡例を明示して色とカテゴリを対応させ、会議資料では必要に応じて注釈で解説すると親切です。GA4経験者にとって積み上げエリアチャートは見慣れないかもしれませんが、Adobeでは重要なKPIを構成要素込みでプレゼンするのに有用です。例えば「総売上は増えているが、新規顧客売上の占比が減少している」など複合的なストーリーを、積み上げエリアで視覚的に説明できます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/area-stacked.html

散布図の活用

散布図(Scatter Plot)は2つの指標間の関係性(相関)を見る際に活用します。GA4には標準で散布図は無く、Excel等で作成するケースが多いですが、Adobe Workspaceには散布図(Scatter)が組み込みで利用可能ですexperienceleague.adobe.com。例えば「各ページのPV数と平均滞在時間の関係」や「各キャンペーンのクリック数とコンバージョン数の関係」など、項目ごとに2つの数値を点でプロットできます。これにより正の相関・負の相関の傾向や外れ値の検出が容易になります。Workspaceで散布図を描くには、自由形式テーブルで2つの指標列を用意し、VisualizationsからScatterを選択します。横軸Xに指標1、縦軸Yに指標2が割り当てられ、各行項目が一つの点となります。例えばページを行に、列にPVと直帰率を設定して散布図化すると、「PVが多いページほど直帰率は低いか?」といった相関を視覚化できます。点にマウスオーバーすると項目名(ページ名など)と具体値がツールチップで表示され、どの点がどの項目か判別できます。また、外れ値と思われる点をクリックしてその項目の詳細を別途分析するといったインタラクションも可能です。GA4では外れ値分析は容易ではないため、Adobeの利点と言えます。さらに、散布図には気泡チャートのように3番目の指標を点の大きさで表現する機能もあります(ただし実際には実装されていない場合もあり、2025年時点では2軸のみ対応の可能性あり)。実務では散布図は複雑すぎてあまり使わないという声もありますが、コンサルタントとしてデータの相関関係を把握するには有用です。例えば広告キャンペーンのコストと収益の散布図を描けば、費用対効果の良し悪しをざっくり掴めますし、製品カテゴリ別ページの閲覧と購入の散布図から、閲覧だけ多く購入に繋がっていないカテゴリなどを発見できます。Adobeではこうした分析から得た知見をセグメント化したり対策検討に繋げる流れが作りやすいです。会議で散布図を直接見せる機会は少ないかもしれませんが、「相関を見るため散布図で確認しました」等の発言は分析プロセスに信頼感を与えるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/scatterplot.html

ヒストグラムの活用

ヒストグラム(Histogram)はデータの分布を分析する際に使います。特に連続値(数値)の度数分布を見るのに適しています。GA4にはヒストグラムはありませんが、Adobe Workspaceにはヒストグラム可視化が用意されていますexperienceleague.adobe.com。例えば「1訪問あたりのPV数の分布」や「ユーザーごとの購入回数の分布」など、特定指標がどのようなばらつきをしているかを把握できます。ヒストグラムを作るには、まず分析したい指標を決め、その値を層別するためのビニング(区間)を指定します。Workspaceではヒストグラム用の設定UIがあり、指標を選択し「ビンの数」や「範囲幅」を決めると自動的に集計されます。例えば「訪問別PV」をヒストグラム化する場合、ビンを0-1, 2-3, 4-5,…ページなどと設定すると、それぞれの範囲に該当する訪問の数が棒グラフで示されます。これにより、大半の訪問は1-2PVで終わっているとか、一部の訪問が10PV以上といった長尾を持つかなど、分布の形状が視覚化されます。GA4ではこうした分布を見るのは一苦労でしたが、AdobeではUI上で簡単に生成できます。さらに、このヒストグラムの各ビン自体をクリックしてセグメント化することもできます(例えば「PVが10以上の訪問」というセグメント作成)。具体的な活用例として、「購入金額の分布」をヒストグラムで見れば、少額購入が多いのか高額購入者がいるのか傾向がわかりますし、「セッション長の分布」を見れば、大半のセッションが短時間離脱なのか一定滞在なのかを把握できます。分布に偏りが見られれば、平均値だけでは見えないインサイトを得られます。ヒストグラム作成はやや手順が独特で、初学者には難しい印象がありますが、GA4経験者がこれをマスターすれば一歩抜きん出た分析が可能です。特に統計的な解析アプローチを好むマーケターには、Adobeでこうした解析もできますと示すと喜ばれます。ただし会議資料に生のヒストグラムを載せる際は、軸ラベルや単位の説明を付け加えることをお忘れなく。分布分析の結果を共有するときは、「ユーザーの購入回数は1回が80%で、5回以上は5%しかいない」といった要約とセットで伝えると効果的です。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/histogram.html

ツリーマップの活用

ツリーマップ(Treemap)は、階層構造のデータや割合を矩形の面積で表現する可視化です。Adobe WorkspaceにはTreemap可視化があり、GA4には無い表現が可能ですexperienceleague.adobe.com。ツリーマップは、例えばサイト内の各コンテンツセクションのPVシェアや、広告キャンペーン群の貢献度を視覚化するのに適しています。Workspaceでツリーマップを使う場合、まず対象となるディメンションと指標を選びます。左パネルからTreemapをドラッグすると設定画面が開き、「グループ化するディメンション」「サイズに使う指標」「色に使う指標」を指定できます。例えばディメンション=ページセクション、サイズ指標=PV、色指標=直帰率とすれば、各セクションがPV数に比例した大きさの矩形で表示され、色の濃淡が直帰率の高低を表します。これにより、「大きな矩形ほどPVが多いセクション」「赤みが強い矩形ほど直帰率が高いセクション」という2軸情報を一目で示せます。GA4では2つの指標を同時に可視化するのは難しく、Adobeの特徴的な機能と言えます。また、ツリーマップ内でセグメントをドラッグすると、強調表示されどの部分がそのセグメントか視覚的に分かります。例えば「モバイル訪問」をセグメントハイライトすれば、モバイルが多いセクションが浮き彫りになるといった具合です。ツリーマップは視覚的インパクトが大きい反面、具体的な数値は読取りにくいので、会議ではインサイト導出に使い、資料では補助的に使うのが良いでしょう。例えば「キャンペーン実績をツリーマップで概観したところ、ある一部の大型キャンペーンが全体の大半を占め、他は小規模だった」と説明材料に使えます。AdobeではTreemapコンポーネントの設定を調整して任意の階層構造を表現できます。もしレポートスイートにページのサイトセクション(第1階層)とページ名(第2階層)が取れるなら、ツリーマップでサイト全体の構成図が描けるようなイメージです。GA4経験者にとってツリーマップは馴染み薄いかもしれませんが、Adobeのデータを俯瞰するのに有用なツールです。ただし要素数が多すぎると一つひとつの矩形が極小化してしまうため、例えば上位10カテゴリ程度に留めておく工夫が必要です。また、色指標として適切な基準(緑=良い、赤=悪いなど)を設定すると理解しやすくなります。会議ではツリーマップそのものより、そこから得られた洞察(どこに集中すべきか等)をメインに語るとスマートです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/treemap.html

ベン図(セグメントオーバーラップ分析)

Adobe Analyticsにはセグメント間の重複を可視化する**ベン図(Venn Diagram)**機能がありますexperienceleague.adobe.com。これはGA4には無いAnalysis Workspace特有の機能で、3つまでのセグメントの交差を視覚化できます。例えば、「直近30日間に訪問したユーザー」「購入したユーザー」「メール登録したユーザー」の3つのセグメント間の関係をベン図で表示すると、それぞれの共通部分のサイズ(人数や訪問数)を円の重なりで表現できます。これにより、複数セグメントがどの程度重複しているか一目でわかります。Workspaceでベン図を利用するには、Segment Comparison(Segment IQ)パネルか、Visualizationsから「Venn」を選択します。左パネルから最大3つのセグメントを円にドラッグして割り当てると、自動的に各領域の計測値(デフォルトはユニーク訪問者数)が計算され、ベン図が描かれますexperienceleague.adobe.com。さらに、各重複領域をクリックしてその部分だけの新規セグメントを作成することも簡単にできます。GA4では複数オーディエンスの重複分析は手間でしたが、AdobeではこのSegment Overlap機能で非常に直感的に分析できます。典型的な活用例としては、「カート投入者と購入者の重なり具合」を見て、カゴ落ち率を視覚化するとか、「モバイル訪問者とPC訪問者のユーザー重複」を確認してクロスデバイス率を推定するといったことが可能です。さらにSegment IQパネルではベン図に加え、各セグメント固有の特徴をランキング表示する機能もあります。これはベン図の定量的インサイトを補足する定性的な情報で、「セグメントAだけに多いページはXページ」といった差分を教えてくれます。GA4に無い強力な分析アシストです。会議ではベン図そのものを見せることも有効です。例えば「全ユーザーのうち5%が購入もメール登録もしたLTV高い層です」とベン図で示せば、視覚的に経営層にも訴求できます。ただし数値も併記しないと正確な理解は難しいため、図の下に重複度を補足説明するのが望ましいです。GA4経験者がAdobeのセグメント比較機能を使いこなせれば、複雑なユーザー行動を整理して提示できるので、大いに差別化ポイントとなるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/segmentation/segment-comparison.html

フォールアウト(Fallout)分析

フォールアウト分析は、サイト内の離脱ポイントファネル転換率を視覚化する手法です。Adobe AnalyticsのWorkspaceではFalloutビジュアライゼーションが用意されており、GA4の「コンバージョン経路(Funnel探索)」に相当します。ただしAdobeではより柔軟に任意ステップのファネルを定義できます。フォールアウトを作成するには、左パネルのVisualizationsから「Fallout」をキャンバスにドラッグします。ステップ数(最大10程度推奨)を選び、それぞれに条件を設定します。条件はページ名やイベント名、セグメントなどを指定でき、「Step1ページを閲覧した訪問者のうち、Step2ページも閲覧した割合…」といった漏斗状チャートが描画されますexperienceleague.adobe.com。各ステップ間の通過率と離脱者数が表示され、一目でどこでユーザーが離脱しているか把握できます。GA4の標準ファネルとの違いは、Adobeでは非直列のファネルも設定できる点です。つまりステップ間に他の行動を挟んでもよく、「最初の接触チャネル=メール→最終的に購入」みたいな離れたイベントの組み合わせもシナリオ化できます。また、各ステップはセグメントでも指定できるため、「初回訪問→2回目訪問で購入」といったクロスセッションのフォールアウトも定義できます。GA4では基本セッション内のシーケンスに限られるので、Adobeの強みです。さらに、フォールアウト図上で任意の区間を右クリックしてその部分のセグメントを作成可能です。例えば「ステップ2で離脱したユーザー」セグメントをワンクリックで保存し、後続分析(離脱理由などの深掘り)に使うといった連携が容易です。GA4では手動で条件セグメントを組む必要がありますが、Adobeではビジュアルから直接セグメント化できるので分析スピードが上がります。典型的なフォールアウト活用例は購入ファネルですが、例えば「サイト訪問→商品詳細閲覧→カート追加→購入完了」とステップを定義しておけば各段階の離脱率が把握でき、改善ポイントの特定に役立ちます。Adobeではこのフォールアウトをリアルタイムでモニタリングすることもでき(設定次第)、キャンペーン時のユーザー動線最適化など高度な用途にも使われています。会議ではGA4と同様にコンバージョンファネルを示す際、Adobeのフォールアウトで求めた数値を活用し、「サイト訪問のうち購入完了まで進むのは1%」等を伝えます。Adobeの出力は見た目も洗練されているので、そのまま資料に貼っても説得力があります。GA4経験者はAdobeのフォールアウト操作に慣れ、細かな条件設定も駆使できるようになると、より高度なユーザージャーニー分析が可能になるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/fallout.html

パス分析(Flow)の活用

パス分析(Flow Analysis)は、ユーザーがサイト内で辿った経路を可視化する手法です。GA4の「経路探索」に相当し、Adobe WorkspaceではFlowビジュアライゼーションとして実装されていますexperienceleague.adobe.com。Flowを使うと、ある起点からユーザーが次にどのページへ進み、さらにどこへ行ったか、といったページ遷移を枝分かれ図で表示できます。また逆方向(あるページに至る前には何を見ていたか)も分析できます。Workspaceでパス分析をするには、VisualizationsからFlowをドラッグし、起点となるディメンション項目を設定します。例えば「ホームページ」を起点にすると、右側にその次に閲覧された上位ページが矢印付きのボックスで表示されます。それぞれのボックス上に%や回数が表示され、何%のユーザーがその経路に進んだかがわかります。さらにボックスをクリックすれば次の遷移先が展開され、3ステップ、4ステップ先まで可視化できます。GA4のパス探索と似ていますが、Adobeでは双方向に辿れる点が秀逸です。すなわち、同じFlowビジュアル内で左側に「前のページ」、右側に「次のページ」というように起点を中央にして両側への経路を表示できます。例えば「購入完了ページ」を中央に置いて、左側にはその前に通ったページトップ3を、右側には購入後に表示されたページ(サンクスページ等)を示す、といったことが可能です。GA4では前方向か後方向どちらかしか見られないので、Adobeの優位点です。また、Flowではページディメンションだけでなくセクションやサイトセクションのような上位概念でも分析できます。さらに、リンククリックやカスタムイベントをディメンションとして扱えば、「あるイベントからの次の行動」なども可視化できます。Flowチャートは多数の経路が絡むと複雑になりますが、Adobeでは閾値を設定して枝を間引くこともできます(例えば1%未満の経路はまとめて「その他」にする等)。これにより主要な動線にフォーカスできます。パス分析の成果は、サイトナビゲーション改善やコンテンツ配置見直しなどに直結するため、会議でのインパクトも大きいです。例えばFlowを示しながら「ホームから商品一覧への導線は強いが、商品詳細から購入への流れが細いので改善余地あり」と説明すれば、視覚的な裏付けがある分説得力が上がります。GA4経験者がAdobeのパス分析を駆使する際は、必要に応じてセグメント適用して、例えば「モバイルユーザーの経路」だけを見る、など細かく分析することも可能です。AdobeではFlowから直接特定パスをセグメントに抽出することも可能なので(右クリックで「この経路のセグメントを作成」)、その点もGA4より便利です。なお、Flowチャートは情報量が多いため、会議資料に載せる際は重要な枝に色を付けたり注釈を添えるなど工夫して伝えると良いでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/flow.html

コホート分析

Adobe Analyticsでは、ユーザーのリテンションや習慣性を調べるコホート分析も可能です。GA4ではコホート機能が標準提供されていますが、AdobeでもWorkspace上でCohort Tableを作成できますexperienceleague.adobe.com。コホート分析とは、ある共通の特性を持つユーザーグループ(コホート)の時系列での継続率や指標を追う分析です。例えば「初回購入月ごとのユーザーが翌月以降どの程度リピート購入したか」といった分析が該当します。Workspaceでコホートを行う場合、Visualizationsから「Cohort Table」を選択します。設定画面で「コホートの定義(例: 初回購入が発生した訪問者)」「追跡する指標(例: 購入イベント数 or 継続率)」などを指定します。Adobeはテンプレートを提供しており、「Retention Cohort(継続率コホート)」としてユーザー継続率を自動計算するモードもあります。出力は行方向にコホートグループ(例: 2023年1月に初購入したユーザー群)、列方向に経過期間(例: nヶ月後)となるテーブルで、セルの値として継続率や人数が埋まります。色の濃淡で率の高低が視覚化され、GA4のコホート表と同様のフォーマットです。Adobeの強みは、コホートの定義を自由にカスタマイズできる点です。GA4では一部プリセットしか選べませんが、Adobeでは任意のセグメントをコホート条件にできます。例えば「キャンペーンXで獲得したユーザー」をコホートにしてその後のサイト訪問継続率を見る、といったことも容易です。さらに追跡指標も購入や訪問、任意イベントなどに変更できるため、応用範囲が広いです。コホート分析の結果はマーケティング施策評価やサービス改善に重要なので、Adobeでも活用する企業が増えています。GA4経験者がAdobeのコホートを使う際は、正しくセグメント設定することが要です。例えば初回イベント検出には訪問者単位セグメントを使い、後続の指標カウントにはヒット単位の計算指標を指定する必要があるなど、多少高度な設定が要求されます。しかし一度テンプレートを理解すればGA4より柔軟なコホート分析ができます。会議でコホート結果を共有する場合、「各月の新規ユーザーの翌月再訪率」をカラーグラデーション表で示せば、時間経過によるエンゲージメント低下などが直感的に伝わります。ただ、詳細すぎる場合は要約して「○月獲得ユーザーのうち3ヶ月後も訪問しているのは20%です」と口頭補足することも大切です。Adobeのコホート機能はExperience Cloud全体のPeople分析とも連携しますので、今後さらに強化される可能性があります。GA4経験者はこの違いを押さえておくと評価されるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/cohort-analysis.html

要約指標(Summary Number)の利用

WorkspaceのSummary Numberビジュアライゼーションは、単一の指標値を大きく表示するためのコンポーネントですexperienceleague.adobe.com。ダッシュボードなどで主要KPIを強調表示する際に有用で、GA4の概要カードに相当します。Summary Numberを追加するには、Visualizationsから「123」アイコンをドラッグします。設定で表示したい指標(例:売上高)と任意で比較対象(前期間比など)を指定すると、キャンバス上に大きな数字が表示されます。フォントサイズや色も自由に変更可能で、背景にアイコンやイラストを設定することもできます。例えば売上高の横に円グラフアイコンを置くなど、視覚的なレイアウトが可能です。また、サマリーナンバーはPeriod-over-Periodの差分を自動計算する機能があります。前期間との増減をパーセンテージや差額で表示し、矢印↑↓で良し悪しを示すこともできます。この場合、比較期間は固定日付や前年同時期など設定可能です。GA4では一部カードで前週比などが見えますが、Adobeではより柔軟です。さらにSummary Numberはいわゆる「Big Number」としてダッシュボード化する時に重宝します。一画面にKPIの全体数値を並べ、下に詳細分析グラフを置くことで、見る側はまず重要数値を把握し、詳細に目を移すという自然な導線ができます。Adobeではこのビジュアルをコピー&ペーストして別プロジェクトにも使い回せます。GA4経験者はAdobeでレポートを作成する際、Summary Numberをうまく配置して数字のインパクトを演出するとよいでしょう。例えば「月間売上」を大きく中央に配置し、その右に「目標達成率%」のSummary、左に「前年同月比%」のSummaryを置けば、経営陣向けダッシュボードとしても見栄えがします。会議では、詳細なグラフや表を議論する前に、このSummary Numberで大枠を共有することが肝心です。「総訪問数は○○で前年同月比+10%です」とSummaryを指し示せば、議論のスタート地点を合わせられます。AdobeではSummary Numberの色をルールで変えることも可能です(例えば前年超えなら緑、未達なら赤などの条件付き書式)。その設定には計算指標とカスタムフォーマットが必要ですが、実現すれば自動的にKPIの達成状況を色で示せるため、レポート閲覧者に非常に親切です。GA4ではできない演出なので、Adobeならではの工夫として提案できます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/summary-number.html

要約の変化(Summary Change)の利用

Summary Changeは、前述のSummary Numberと似ていますが変化量(差分)に特化したビジュアライゼーションです。Adobe Workspaceで「Summary Change」を選ぶと、選択した指標の変化分(増減)や増減率を矢印付きで表示できますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。例えば、売上が先月から+5%なら緑の上矢印と「+5%」と表示されます。これはGA4の概要カードでも多少可能ですが、Adobeでは単体コンポーネントとして自由にレイアウトできます。Summary Changeを使用するには、設定で基準期間比較期間を指定します。基準期間に対してどれだけ変化したかを計算し、%または絶対値を表示します。例えば基準=今年、比較=昨年とすれば前年比の増減を表示します。出力は「▲10%」「▼2,000」などの形式で、色や矢印記号も自動で付きます。このビジュアルは単体ではなく他のSummary Numberと組み合わせて使うことが多いです。例えばSummary Numberで現月売上を表示し、その隣にSummary Changeで前月比・前年比を2つ並べれば、一目でKPI達成度合いとトレンドが分かります。GA4では一部カードで増減を注釈的に表示できますが、Adobeではよりカスタマイズ可能です。Summary Changeは指標だけでなく、セグメントを指定することもできます。例えば「全体訪問数に対する新規訪問数の増減」を表示するといったこともできます。ただ実際は期間比較が主な用途でしょう。注意点として、変化量計算には計算指標を用いることが推奨されます。Adobeには比較機能組み込みもありますが、複雑な期間組み合わせだと自分で計算指標を作った方が正確です。会議でSummary Changeを使うと、例えば「今月のCV数は1,000件で、先月比+5%、前年同月比+10%です」といった報告が視覚的に行いやすくなります。緑の上矢印があれば好調、赤の下矢印なら要改善と瞬時に理解されます。ただし色覚バリアフリーやモノクロ印刷時のため、矢印と+/-も併用しておくと親切です。AdobeではこのSummary Changeをさらに高度に使うと、予測に対する実績差なども表現できます。例えばAdobe Forecast機能で算出した予測値と実値の差を計算指標にし、それをSummary Changeにすれば、目標予測比の達成度を表示できます。GA4にはない価値ある指標提示となるでしょう。総じてSummary Changeはダッシュボードをより「ストーリー性のある」ものにします。GA4経験者は静的な数字報告に慣れていますが、Adobeではこのように変化を強調したレポートを作成することで、データから行動への示唆を引き出しやすくなります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/summary-change.html

テキストウィジェットの利用

Workspaceではレポート内に説明文や見出しを入れるためのTextビジュアライゼーションが用意されていますexperienceleague.adobe.com。これはGA4の探索には無い機能で、Adobeで作成するダッシュボードやレポートに解説を加えたり区切りタイトルを表示するのに使えます。Textウィジェットを追加するには、Visualizationsから「Text」をドラッグします。テキストエディタが表示され、好きな文章を入力できます。Markdown記法や簡易なスタイル適用も可能で、太字・箇条書き・リンクなどを含むリッチテキストを記述できます。例えばダッシュボードの冒頭に「●●レポート 2023年9月度」と大見出しを書いたり、各グラフの下に「※データは前月比」と注釈を入れることができます。また分析結果の考察を書き込んでおき、関係者に共有する運用も可能です。GA4では分析コメントを入れる欄がないため、Adobeのこの機能はコミュニケーションに役立ちます。さらに、シンプルなテキストだけでなく絵文字や記号もある程度使えますし、複数のテキストウィジェットを組み合わせて凝ったレイアウトを作ることもできます。例えばレポートを章立てして見出しテキストを配置し、区切り線もテキストウィジェット(水平罫線)で挿入するなどすれば、まるでレポートドキュメントのような整った体裁にできます。会議でAdobe Workspaceを直接見せる場合、テキスト説明がレポート内にあれば、その場で資料を配布せずとも理解を促せます。共有したプロジェクトを受け取った側も、文脈が書かれていれば独力で解釈しやすくなります。注意点として、Textウィジェットは動的に数値を参照することはできません。つまり「先月は {売上} でした」といった自動埋め込みはできないので、数値は最新時点で書き込むか計算指標と組み合わせる必要があります。もしテキストに動的数値を埋め込みたければ、埋め込み対象の計算指標をSummary Numberとして表示し、その隣にテキストを置くなどの工夫でカバー可能です。GA4経験者がAdobeでテキストを有効活用するコツは、「5W1Hを簡潔に書く」ことです。例えば「売上減少の主因は客単価低下であり、来店数は堅調。」とグラフ下に補記すれば、見る人は数字とともに原因も理解します。こうしたコメントを都度ExcelやPDFで追記するのは手間ですが、Adobeなら最初から組み込んで自動でアップデートできるため、レポーティング効率が向上します。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/text.html

セルのヒートマップ表示

Analysis Workspaceでは、自由形式テーブルのセルに条件付き書式を適用してヒートマップ表示することができます。これは数値の大小を色濃淡で示す機能で、GA4の探索では用意されていない高度な見せ方です。テーブルの任意の列に対して、右クリックメニューから「条件付き書式 > ヒートマップ」を選択すると、その列内で最大値が最も濃い色、最小値が最も薄い色としてグラデーション表示されます。例えばページビュー列をヒートマップ化すれば、テーブル内でPVが高いページほど濃い青(設定色による)になり、一目で上位が判別できます。この色分けは数値傾向を直感的に伝えられるため、行が多いレポートでも視覚的に注目すべき箇所が分かります。条件付き書式では色スケールをカスタマイズ可能で、青→白→赤の二色グラデにして平均値付近を白、上回ると青、下回ると赤とする、といった使い方もできます。GA4ではPivotなどでセル色付けすることはできないので、Adobeならではの表現です。ただしヒートマップは相対比較には便利ですが、正確な数値読み取りには不向きなので、色はあくまで補助と考える必要があります。一般には、社内共有用ダッシュボードでヒートマップを用いて「売上が多い地域ブロック」を色で示したり、メディア掲載一覧のPVインパクトを色分けしておくなどに使われます。設定も容易なので、コンサルタントが作成したレポートで要所にヒートマップが入っていると、受け手の理解が早まり満足度が上がるでしょう。例えばSEO流入キーワードのリストでヒートマップを適用しておけば、上位トラフィックのキーワードがパッと分かり、長い表でも要点把握が容易です。ヒートマップ以外に条件付き書式ではアイコン表示もできます。例えば数値がプラスなら▲、マイナスなら▼マークを付けることなどが可能で、Excelのアイコンセットに似ています。これらを駆使すると、定型レポートがより「見るレポート」から「理解するレポート」に進化します。GA4経験者はAdobeのこうした細やかな表現力を活用し、単にデータを羅列するだけでなく、そのデータから判断しやすい形に加工することが重要です。会議では色付き表を配布する際にモノクロ印刷ではどう見えるかも考慮し、必要なら数字自体に色に代わる注釈を付ける配慮も行うと完璧です。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/visualizations/table-conditional-formatting.html

ランキングとソート

Workspaceの自由形式テーブルではランキングソートを柔軟に設定できます。GA4では探索時に上位/下位絞り込みや並べ替えはできますが、Adobeの方がコントロールしやすいです。まず、ソートは列ヘッダーをクリックするだけで昇順/降順の切替が可能です。例えば訪問数列を降順ソートすれば上位ページが並びますし、クリック2回で昇順(下位ページ先頭)になります。また、複数列でのソート優先順位も設定できます。右クリックメニューから「詳細オプション」で第一ソート列、第二ソート列…と指定可能です。例えば「セッション数降順、同値なら直帰率昇順」といった並び替えが行えます。GA4探索ではそこまで細かくはできないため、Adobeの強化点です。次にランキングですが、Adobeのテーブルはデフォルトで最大400行まで表示されます(設定で増減可能)。上位N件だけを表示したい場合、可視行フィルターを使います。テーブル右上のフィルターアイコンから「トップ5行を表示」等を設定可能です。これで自動的に上位5だけが残り、それ以降は「その他」として合算表示させることもできます。GA4でも上位だけ表示はできますが、「その他」を一つの行にまとめる機能はAdobe独特です。例えばページ別PV上位10を表示しつつ、それ以下の合計をOthersとして扱うことで、上位10の占有率が計算できますpersol-bd.co.jppersol-bd.co.jp。さらに特定値でフィルタすることもできます。例えばPVが1000以上の行だけ残すといった数値フィルタは、列ヘッダー右クリックから「フィルター」を設定します。これにより閾値以上/以下を絞り込めます。GA4でもフィルタはありますがAdobeはUI上で簡単にできます。Rankingの応用として、Adobeでは小計機能も提供されています。ディメンションをグループ化して小計行を挿入する設定(例えば国別小計、グローバル計など)も可能です。GA4にはないためExcel処理が必要でしたが、Adobeならワンクリックで小計行を追加できます。Ranking機能を会議で活かすには、例えば上位だけのスライドを作る場合にAdobe側でトップ10に絞った表を用意しておくなどが挙げられます。わざわざExcel転記してソートする手間が省けます。ソートに関しても、例えば「直帰率でソートしたページランキング」をAdobe上で作成しておけば、高離脱ページをすぐ提示でき、改善議論がスムーズになります。GA4経験者がついやりがちなダウンロード後Excel加工が、Adobeではほぼ不要になるわけです。ただしAdobeのランキング設定はプロジェクト保存時には保持されますが、共有先が別ソートに変更することも可能なので、共有相手には意図したソートを崩さないよう注意喚起が必要です。最近ではWorkspaceの「読み取り専用」共有でソート変更できないようにすることもできます。このようにAdobeでは結果の見せ方まで設計に含められるため、分析者はランキング・ソートを駆使してレポートの流れを組み立てることが求められます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/analysis-workflow/sort-filter-visualize.html

行数の制御とエクスポート

Workspaceではテーブルの行数を自由に制御できます。デフォルト表示は最大400行ですが、プロジェクト設定で増減可能です。非常に多くの行がある場合、Workspace上ではパフォーマンスのため400に抑え、それ以上はエクスポートで取得する手段があります。右上のダウンロードメニューから「CSVダウンロード」を選ぶと、最大50万行までエクスポートが可能ですexperienceleague.adobe.com(ただしブラウザで処理するためExcelでは開けない可能性あり、BIツールやデータ集計に回すことが想定されています)。GA4ではUIからそこまで大量行は取得できず、BigQueryでSQL実行する必要がありますが、Adobeはワンクリックです。またPDFや画像形式でエクスポートも可能で、これはGA4探索と同様です。レポートをPDFで関係者にメール送付するスケジュール機能もAdobeには備わっています。行数を調整することで、「トップ100まではレポートに含め、詳細なロングテールはCSVで添付」などの運用ができます。さらにページネーション機能もあり、テーブルを複数ページに分けてPDF出力することも可能です。例えば50行ずつの表を10ページに分けてPDF化し、全部で500行カバーというようなことも設定できます。GA4ではWebで見る前提なので、Adobeのような紙・PDF向け細かな配慮はされていません。この違いは大きく、Adobeのレポートなら印刷物資料としても整った形にしやすいです。行数制御のもう一つの意味は、要点を絞ることです。例えば上位10以外をOthersにまとめれば視覚的にスッキリしますし、どうしても詳細全部見せる場合は、主要なところはWorkspace画面で説明し、「詳細はエクスポートデータ参照」と伝えれば良いです。Adobeではまた、**Report Builder(Excel連携)**でさらに柔軟なデータ取得もできます。行数の概念から少し逸れますが、ExcelでPivot等したければReport Builderで全行取得してExcel上で加工する選択肢もあります。GA4はBigQuery+ExcelPowerQueryなど必要でしたが、AdobeはExcelプラグイン一つで完結します。まとめると、AdobeはUIでの行数表示とエクスポートの両面でGA4以上の対応力があり、様々なニーズに合わせられます。会議では、時に「全データをください」という要求が出ますが、Adobeなら「はい、50万行CSVですぐお渡し可能です」と答えられます。ただし実用上50万行を超える場合はData Warehouseを使うなど別手段になりますので、その見極めも重要です。とはいえ一般的なWeb解析では上位数千行まで見れば十分なケースが多いため、Adobe Workspaceで事足りることがほとんどでしょう。GA4経験者はAdobeのエクスポート力を知っていれば、安心して「必要な詳細データも提供できます」と伝えられ、クライアントの信頼を得やすくなります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/using/csv-export.html

異常検知(Anomaly Detection)

Adobe Analyticsには統計モデルに基づく**異常検知(Anomaly Detection)機能がありますa2guide.jp。時系列データにおいて実績値が期待値から外れている場合、自動でハイライトして通知するものです。GA4もアラートや異常検知の仕組みがありますが、AdobeではAnalysis Workspace内で直接活用できます。具体的には、折れ線グラフなどの時系列可視化に対し異常検知をオンにすると、Adobeのバックエンドが過去のパターンから予測区間を算出し、それを超えたデータポイントに色付きの点やアイコンを表示しますa2guide.jp。例えば平日の訪問が通常1万前後なのに、ある日だけ2万に急増した場合、その点が異常と判断されマークされます。これにより、担当者はグラフを眺めるだけで異常値に気付きやすくなります。閾値設定は不要で機械学習が自動適応し、また軽微な変動は誤検知されないようスモールシグナルには反応しにくくなっています。Workspaceではこの異常検知点を右クリックして貢献度分析(Contribution Analysis)**を実行することも可能ですa2guide.jp。これは異常値の原因をAdobeが自動解析する機能で、該当指標に対してその変動に寄与したディメンション項目をランキングしてくれます。例えば訪問数急増日の貢献度分析を行うと、「オーガニック検索からの新規訪問が平時より+5000と突出」という洞察を数十秒で提示してくれます。GA4にはこのような機能は無く、Adobeの非常に強力な分析アシスタントです。会議では、この異常検知と貢献度分析により迅速に原因報告が可能です。例えば「先週末のコンバージョン急落は異常検知され、貢献度分析の結果、特定キャンペーン終了による流入減が主要因と判明しました」と報告すれば、解析力の高さを示せます。GA4経験者はAdobeのこうした高度分析機能を積極的に活用するとよいでしょう。注意点として、異常検知は過去データからの逸脱を検知するので、新規イベントなどパターンがないものは検知精度が低いです。また、あまり変動が大きすぎるデータは全て異常扱いになるため、対象指標を適切に選ぶことも重要です。Adobeでは指標ごとに異常検知の有無を設定できるので、KPIとなる重要指標(売上/コンバージョン等)ではオンに、それ以外はオフにするといった運用になります。異常検知により機械任せでなく、人がその原因をすぐ追求できる環境をAdobeは提供します。これはGA4にはない大きな価値であり、コンサルタントはこれを存分に活用して「なぜ」を解明することで、信頼を勝ち取れるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/analysis-workflow/anomaly-detection.html

貢献度分析(Contribution Analysis)

貢献度分析は、前述の異常検知と連携するAdobe AnalyticsのAIアシスト機能です。特定の指標変化に対し、どのディメンションやセグメントがその変化に寄与したかを統計的に導き出します。例えば「日次PVが前日比+30%と急増した」という事象に対し、Contribution Analysisを実行すると「寄与度の高い要因」として「メールキャンペーン来訪増+15%」「新規ユーザー増+10%」等をリストアップします。GA4にはこのような自動分析機能はなく、Adobe独自の強みです。利用するには、Workspace上で異常検知マークの出たデータポイントを右クリック→「貢献度分析を実行」を選びますexperienceleague.adobe.comexperienceleague.adobe.com。バックグラウンドで数分以内に計算が行われ、結果が専用パネルやメールで提供されます。結果には寄与の高い上位要因が並び、それぞれの増減寄与率が示されます。ユーザーはその中から心当たりのある事象(例えばキャンペーン名など)を見つけ、詳細調査に進みます。この機能はAdobe Analyticsの中でも高度な部類で、GA4経験者には馴染みがないでしょう。しかし会議では非常にインパクトがあります。「AIが要因を特定したところ○○が上昇要因でした」と伝えられれば、迅速な洞察提供に驚かれるでしょう。貢献度分析は時に予想外の要因を示すこともあり、分析者はそれを鵜呑みにせず検証する姿勢が必要です。GA4的な手動分析と組み合わせることで、漏れのない原因究明が可能となります。Adobeでは現在、この貢献度分析をよりUI統合し、異常検知とセットでInsightsとして提供する方向に進化しています。GA4経験者がAdobeを扱う際は、このようなAI機能に習熟し、必要時に使えるよう準備しておくと良いでしょう。例えば突発的なトラフィック変動時、従来は原因究明に数時間かかったものが、Adobeの貢献度分析なら数分で当たりを付けられるため、初動対応が格段に早くなります。会議では、トラブルや成果の原因解説にこの機能で得た知見を織り交ぜることで、分析力をアピールできます。ただし完全にブラックボックスでは説得力に欠けるため、出てきた要因に対し自分の頭で納得できる解釈を付け加えることが重要です。「貢献度分析は○○と示しました。実際にその日のデータを見ると○○流入が突出しており、これは前日実施のメルマガが原因と考えられます。」といった具合に、AI結果+アナリストの論理で補完することがプロフェッショナリズムと言えます。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/analysis-workflow/contribution-analysis.html

アトリビューションIQ(Attribution分析)

Adobe Analyticsには、コンバージョンに対する寄与を評価するAttribution IQ機能があります。GA4でもデフォルトのラストクリック以外にデータドリブンや線形モデルが提供されていますが、AdobeではAnalysis Workspace上で複数モデルの比較や任意モデルの適用が自在です。具体的には、WorkspaceのパネルにAttributionという専用パネルテンプレートを使うか、自由形式テーブルで指標に対し異なるアトリビューションモデルを割り当てます。例えば、コンバージョン数という指標に対し「ラストタッチ」「ファーストタッチ」「線形」「減衰」と4種類のモデルを適用した列を並べれば、各チャネルのコンバージョン貢献の評価がモデルごとに比較できますexperienceleague.adobe.com。GA4ではモデル比較は2種類までだったので、Adobeの方が詳細な分析が可能です。Adobeが提供するモデルには、ラスト・ファースト・線形・減衰・U字・J字・時間減衰など計10種類ほどあります(Attribution IQ)youtube.com。さらに、カスタムルールで独自モデル(例えば特定チャネルを優遇など)も作成できます。これらはUI上の設定だけでリアルタイムに結果が再計算されるため、集計し直す必要はありません。GA4の場合は設定変えると暫く計算待ちがありますが、AdobeはAnalysis Workspace内で瞬時に切り替えられます。例えば会議中に「ではファーストタッチではどうか」と選択変更すれば、即座に表が切り替わります。この速さはGA4には無い強みです。実用上は、Attribution IQで「過小評価されていたチャネル」を見つけたり、「モデルによって評価がブレるポイント」を把握したりできます。例えばラストタッチではPaid Searchが主力だったが、ファーストタッチではDisplay広告が重要だった、などの発見です。これをマーケ施策配分に活かすのが狙いです。GA4経験者にとって、Adobeのアトリビューション比較は非常に強力かつ簡単なので、積極的に提案すると良いでしょう。例えばマルチチャネルキャンペーンの成果報告で「ラストクリックではEmailが最多CVですが、ファーストクリックではDisplayが起点となっているCVが多い」と伝えれば、認知広告の価値が評価されるなどの展開につながります。Adobeではさらにアトリビューションパネルという簡易UIがあり、初心者でもドロップ操作でモデル比較チャートが作れますexperienceleague.adobe.com。GA4は設定画面でしかモデル変えられず分析視点は限られますが、AdobeはWorkspac上で自由な分析が許されています。ただ注意点として、アトリビューション分析を行うにはデータ収集時にチャネルやキャンペーンの情報(eVar等)を適切に保持しておく必要があります。Adobeでは特にeVarの**割当(allocation)**がデフォルトでは「ラストタッチ」なので、ファーストタッチも評価したければ専用eVarを用意するか、アトリビューションIQの「ポジションベースモデル」でシミュレートする必要があります。このあたりは少々テクニカルですが、GA4経験者がAdobeを使う上では押さえておくと良いでしょう。会議では、アトリビューション分析結果を示す際に「AdobeのAttribution IQで各モデルを比較しました」と一言入れると、聞き手に「高度なAdobe機能を活用している」という印象付けになります。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/panels/attribution.html

Adobe Targetとの連携分析

Adobe AnalyticsはAdobe Experience Cloudの一部であり、A/BテストツールのAdobe Targetと連携してテスト結果を分析できます(機能名: Analytics for Target, A4T)。GA4とGoogle Optimizeの関係に近いですが、Adobeではよりシームレスなデータ共有が可能です。具体的には、Targetで実施したエクスペリエンス(バリエーション)情報がAdobe Analyticsの変数として自動収集され、Workspace上でTarget活動レポートフォールアウト等に組み込めますexperienceleague.adobe.com。例えば「トップページ新デザインテスト」でA/B2パターンのどちらが下層ページ遷移率が高いか、といった分析をAdobe側で詳細に行えます。GA4+Optimizeでは一部CV指標程度しか比較できませんでしたが、Adobeなら任意の指標(閲覧深度、購入率等)でターゲットテストの効果を評価可能です。設定は、Target活動作成時に「Analyticsでレポート」をオンにして対象レポートスイートを指定するだけで、複雑な実装は不要です。データは数分遅延でAdobe Analytics側に反映されます。WorkspaceにはAnalytics for Targetパネルというテンプレートもあり、選択するだけでテスト活動の主要指標比較表やグラフが自動生成されますexperienceleague.adobe.com。これにより、非分析者でも容易にテスト結果を判断できます。GA4経験者にとって、Adobe環境下でのTarget連携は驚くほど簡単で強力に映るでしょう。また、Target以外のテストツールであっても、テストパターンIDをAdobeに送っていれば同様の分析は可能です。AdobeではExperience Cloud IDを共通基盤に各ソリューションが統合されている強みを存分に活かしています。会議では、サイト改善の一環として行ったA/Bテストの結果をAdobe Analyticsからの数字で示すと説得力があります。「Analyticsで本件テストの差異を検証したところ、バリアントBがCVR +2.5ptと有意に上回りました」といった具合です。さらにAnalyticsでセグメント分解すれば「新規ユーザーにおいて顕著」など深堀りも容易で、施策にフィードバックできます。GA4ではそこまで詳細なA/B結果分析は困難だったため、Adobeのアドバンテージです。Adobe Targetとの連携を語れることは、Adobe Marketing Cloud全体を理解している証ともなるため、コンサルタントとしては高ポイントです。仮にTargetをまだ使っていない場合でも、「Adobe AnalyticsはTargetやAudience Managerと連携可能で、更に高度なパーソナライゼーションPDCAが実現できます」と提案できると先進性を感じさせられます。ただ注意として、A4T連携にはExperience Cloud組織内での実装前設定が必要なので、プロジェクト開始時にエンジニアと確認しておくべきです。また、Targetで行ったすべてのアクティビティが自動でAnalyticsに来るわけではなく、A4T有効化したものだけになります。この辺りの知識もフォローできればなお良いでしょう。GA4経験者がAdobeのクロスソリューション連携まで言及できれば、クライアントは「この人はAdobeマーケティングスイート全体を俯瞰して最適提案できる」と信頼を寄せるはずです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/analyze/analysis-workspace/panels/analytics-for-target.html

広告コストデータの統合

Adobe Analyticsでは、広告プラットフォームのコスト・インプレッション・クリックデータを統合するAdvertising Analytics機能があります。GA4ではGoogle Adsとは自動連携できますが、AdobeではGoogle AdsやFacebook Ads等からデータソースをインポートし、費用対効果分析を一元化できます。具体的には、Adobeのデータソース機能を使って広告コストファイルをアップロードします。Google広告についてはAdobeが提供する連携コネクタがあり、API経由で日次インポートが可能です。設定すると、Adobe Analytics内に「キャンペーンコスト」「クリック数」「Impressions」などの指標が追加され、コンバージョン成果と並べて表示できます。これにより、ROAS(広告費用対収益)やCPCなどをAnalyticsの計算指標で算出でき、チャネル横断の投資対効果比較が容易になります。GA4の場合Google領域は容易ですが、他媒体や詳細指標はLooker Studio等で別途やる必要がありました。Adobeならワンストップです。Advertising AnalyticsはUA時代のGA360にあった類似機能(GAからキャンペーンコストデータインポート)と同様ですが、Adobeは外部媒体も対象にできる柔軟性があります。会議では「Analyticsに広告コストも取り込んでおり、チャネル別ROIをリアルタイムで見ています」と言えると、高度な統合分析をアピールできます。ただ実務では、このコスト連携はAdobeコンソール上で初期設定やスケジュール設定が必要であり、導入状況次第では未実施のこともあります。その場合は無理に触れず、「Adobeでは広告データ連携もできます」と将来案内程度に留めるのが良いでしょう。もし実装済みなら積極的に使って、例えば「今期Google広告費は100万円で売上500万、ROI500%です。FacebookはROI300%なのでやや効率低めです」と具体的に示します。このように複数プラットフォーム横並びの評価は経営層が喜ぶ観点です。GA4では全チャネルの費用統合は大半が手作業なので、Adobeの効率性を強調すると良いです。さらにAdobeではCampaign(旧Adobe Campaign)などメール配信システムとも連携可能なので、本当に全マーケチャネルを統合分析できます。これを「マーケティングのシングルソース」として活用している会社もあります。GA4経験者はAdobeでのデータ連携範囲が広いことを理解し、提案材料に含めましょう。ただしコスト等機微情報の取り扱いには注意し、権限あるメンバーだけが閲覧できるWorkspaceにする等配慮が必要です。テクニカルには、インポートデータとサイトデータの結合キーを統一するなど細かい要件がありますが、会議では詳細には触れず「連携可能」と伝えれば十分でしょう。必要な場合、後で設定方法を技術スタッフと確認する段取りにすればOKです。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/data-sources/cost-and-inventory/reporting-cost-data.html

滞在時間の計測

ユーザーの滞在時間(Time Spent)計測には、AdobeとGA4で若干の違いがあります。Adobe Analyticsでは各ページヒット間の時間差を累積する方式で訪問時間を算出します。つまり、あるページの滞在時間はその次のヒット発生時までの間隔となり、最後のヒットには時間が割り当てられない仕様です(UAの方式と同じ)softbanktech.co.jp。そのため、直帰訪問の滞在時間は0秒として計上されます。一方GA4では「エンゲージメント時間」という概念で、ページフォーカスやスクロールからユーザーがアクティブに過ごした時間を測定します。結果、GA4では直帰でも数秒~数十秒の滞在が計上されるケースがある一方、Adobeでは完全に0と扱われます。この違いを念頭に、Adobeで平均滞在時間を議論する際は計算ロジックに留意が必要です。Adobeにおける平均訪問時間は「全訪問の合計滞在時間/訪問数」で算出され、直帰が多いサイトでは平均値が短く出やすいです。GA4のエンゲージメントタイムと直接比較するとAdobeの方が小さく出る傾向があります。コンサルタントとして、クライアントに「GA4では平均5分だったのにAdobeでは2分しかない」と聞かれたら、この測定定義の違いを説明する必要があります。さらにAdobeではアクティブ時間を計測するプラグイン(Activity Mapなどでは一部計測可能)もありますが、デフォルトでは無効です。ページ滞在時間をより正確に測りたい場合、例えば定期的にpingを送る実装も可能ですが、その分ヒットが増えるので契約コストとの兼ね合いになります。GA4経験者は、Adobeではそうした自動計測は標準で無いことを知っておくべきです。Adobeでは滞在時間関連の既定指標に「平均滞在時間(訪問単位)」や「合計滞在時間(秒)」などがあり、また「ページ深度」なども指標提供されます。これらを組み合わせれば、だいたいのサイトエンゲージメント指標を把握できます。GA4のエンゲージメント率とAdobeの直帰率も連動する概念で、互換は無いものの、Adobeでは直帰率が改善されればエンゲージメントも上がっているとみなせます。会議では、AdobeとGAの滞在時間定義の違いで数字にギャップが出た際、「Adobeは最終ヒットの時間をカウントしないため短めに出ます」と説明できると安心されます。また、「エンゲージメント率はAdobeには無いが、直帰率の逆数で近似できる」といった代替策もアドバイスできます。Adobe自体も将来的にクッキーやイベントベース計測への移行に伴い、滞在時間算出の見直しがある可能性もあります。GA4経験者として、その点にも触れられると最新情報に精通している印象を与えられるでしょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/metrics/time-spent.html

直帰率とエンゲージメント

GA4では直帰率(Bounce Rate)は廃止され、代わりにエンゲージメント率(Engagement Rate)が導入されました。一方、Adobe Analyticsでは従来通り直帰(Bounce)指標があります。直帰とは1回の訪問で1ページ(または1ヒット)のみで離脱した訪問のことです。Adobeでの直帰率は「直帰訪問数/総訪問数」として計算されます。GA4のエンゲージメント率は定義が異なり、「10秒以上滞在、または2ページ以上閲覧、またはコンバージョン発生したセッションの割合」です。つまりGA4では直帰率の裏返しではなく、より積極的な関与を示す指標です。Adobeではエンゲージメント率に相当する指標は直接はありませんが、直帰率の低下が即エンゲージメント率の上昇に繋がると考えることができます(定義の差はあるが方向性は逆)。またAdobeではユーザーが1ページしか見なくてもイベントが発生すれば非直帰となりますが、GA4では10秒未満ならそれでも非エンゲージと判定されるなど、微妙な違いがあります。会議ではこれを簡潔に説明するのが難しい場合、「GA4ではエンゲージメント率XX%ですが、Adobeの直帰率はYY%で概ね(1-YY)がおおよそのエンゲージメント率と捉えられます」と補足すると理解されやすいでしょう。Adobeで直帰率が高いページは課題ページと位置付けられます。GA4ではエンゲージメント時間とかスクロール等も見ますが、Adobeでは直帰+滞在時間0が問題とされるので、対策として関連コンテンツ導線を増やすなどを提案できます。GA4経験者がAdobeを扱う際は、指標の読み替えに注意が必要です。例えばGA4レポートでは「エンゲージメント時間トップ5ページ」を語っていたのが、Adobeでは「滞在時間合計トップ5ページ」に置き換えられます。その際、直帰率も併記するとより評価がしやすくなります。直帰率はAdobeではセグメント化も簡単で、「直帰した訪問者セグメント」を作ってその特徴を分析する、といったこともできます。GA4では直帰概念が無いためそれはできません。Adobeだからこそできるアプローチです。また、Adobeでは**離脱率(Exit Rate)**という指標もあり、各ページがセッションの最後になった割合を示します。GA4には離脱率は概念上ありますがUIで表出しないため、Adobeでは直帰率と離脱率の両方を確認することで、ページの問題性を深掘りできます。GA4経験者はAdobeにおけるこれら指標の違いを踏まえ、「直帰率○%と離脱率○%が高めなのでエンゲージメント向上余地があります」といった総合的見解を示すと良いでしょう。クライアントから「エンゲージメント率は?」と聞かれた場合も、「Adobeでは直帰率がその代替指標となります」と回答すればOKです。近年Adobeでも「エンゲージセッション」という考え方をExperience Platformで取り入れている動きがありますが、従来のAdobe Analyticsには無いので混同しないよう注意しましょう。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/metrics/engagement-metrics.html (※Adobeにおけるエンゲージメント指標の説明)

eコマース計測の違い

eコマースに関して、Adobe AnalyticsとGA4では計測アプローチが異なります。GA4ではECイベント(view_item, add_to_cart, purchase等)とパラメータを送信すれば、自動的に売上や商品別指標が生成されます。Adobeでは、products変数と呼ばれる専用の変数フォーマットに商品IDやカテゴリ、数量、売上額を詰めてトラッキングコードで送信しますpersol-bd.co.jppersol-bd.co.jp。例えばprodView時にはproducts="Category;ProductID;;;"のように値を設定し、購入完了時にはproducts="Category;ProductID;Quantity;Price"形式で送ります。また併せて購入イベント(eVarで売上額, success eventで注文数)を送信します。つまりAdobeでは開発者がきっちりとEC実装を行って初めて、レポート上に商品別売上や注文回数などのデータが現れます。GA4は自動でデータ絞り込みや通貨変換もするのに対し、Adobeは商品の階層分類や複数通貨処理などを事前に設計して実装する必要があります。逆に言えば柔軟性が高く、商品IDの代わりにカスタム属性を格納したり、商品ごとの任意指標(利益額など)を追加することも可能です(分類や追加eVarで対応)。Adobeのレポートでは製品ディメンションに商品名が表示され、関連指標(売上、数量、注文件数等)はその製品粒度で見られます。GA4に比べ詳細なフィルタやセグメントを適用でき、例えば「特定キャンペーン経由の売上を商品カテゴリ別に集計」といったクロス分析も容易です。GA4ではそのような組み合わせは標準レポートでは難しく、BigQuery利用などが必要になる場合があります。会議では、AdobeならではのEC分析例を挙げると説得力があります。「Adobeでは商品ごとの購入ファネル(閲覧→カート→購入)も分析可能で、離脱の多い商品を特定して改善できます」等です。GA4でも探索で商品別ファネルはできなくはないですが、Adobeの方が柔軟です。またAdobeでは在庫やコストデータもData Sourceで取り込めるため、売上と在庫消化率の関係分析なども実現できます(GA4単体では困難)。さらにAdobeではマーチャンダイジングeVarという特殊な変数を用いて、商品毎に属性を保持することもできますex-ture.com。これはGA4のItem-scopedカスタムディメンションに近いですが、Adobeの方が実装の自由度があります。GA4経験者は、AdobeでEC計測する場合は実装負荷は高いが分析力は上がる、と認識しておくと良いでしょう。クライアントに「GA4より難しそう?」と問われたら、「計測設計に工夫が要りますが、一度実装すればGA4以上にきめ細かいEC分析が可能です」と答えられると理想的です。なおAdobe AnalyticsにはECサイト向けの追加機能として「購買ファネルテンプレート」や「RFM分析」なども提供されています。これらを組み合わせればGA4以上に高度なCRM的分析が可能になります。GA4経験者がそこまで触れられれば相当上級ですが、知識としては知っておきましょう。要は、AdobeはEC計測をより専門的・柔軟に追求できるツールであるということです。GA4が手軽さ重視なのに対し、Adobeは手間をかけるほどリターンが大きい、という違いとしてクライアントに説明するのも一つの手です。

参考画像:https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/admin/data-sources/cost-and-inventory/ecommerce-data.html

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