Adobe Analyticsにおける「内部URLフィルター」の必要性とGA4との違い

セグメント、計算指標、アトリビューション

GA4では内部ドメインの扱いが自動

Google Analytics 4 (GA4) では、基本的に計測対象の自社ドメインは自動的に「内部」と見なされます。つまり、自社サイト内でページ間を移動してもそれは内部遷移と判断され、外部からの新しい流入とは扱われません。一方、計測対象外のドメインから訪問があった場合のみ「外部からの流入」として扱われます。GA4ではこの内部・外部の区別が標準で行われているため、特別な設定をしなくても自然検索(オーガニック検索)や広告流入SNS流入など、外部からの訪問が自動で検出・分類されます。結果として、GA4ではレポート上で流入元ごとのセッション数を比較する際に、ユーザー側で特別な設定を追加せずとも正しく分類されたデータ(例:「Organic Search」「Paid Search」「Referral」「Direct」など)を見ることができます。

Adobe Analyticsでは「内部URLフィルター」の設定が必要

Adobe Analytics では、GA4のように自動で内部ドメインを認識する仕組みがありません。その代わりに、「内部URLフィルター (Internal URL Filters)」という設定を管理画面で手動設定する必要があります。この内部URLフィルターでは、「自社サイト内のURL(内部と見なすドメイン)」をリストとして登録します。Adobe Analyticsはこのリストを参照して、トラフィックのリファラー(参照元)が自社サイト内か外部サイトかを判断します。

  • 設定場所と方法: Adobe Analyticsの管理者は、「Admin(管理)」 > 「Report Suites」 > 「Edit Settings」 > 「General」 > 「Internal URL Filters」 の画面で、自社ドメイン(および内部と見なす必要のある関連ドメイン)をフィルターに追加します。例えば、自社サイトが example.com であれば、example.com を内部URLフィルターに登録します(プロトコルや「www」は含めず、ドメイン名のみ指定するのが推奨されていますexperienceleague.adobe.com)。こうすることで、example.com を含むURLからの参照は「内部」とみなし、レポート処理時に外部流入レポートから除外します。
  • 内部URLフィルターの役割: 内部URLフィルターで指定したドメインからのリファラーはすべて内部トラフィックとして扱われます。これによって、「Referrer(リファラー)」や「Referring Domain(参照ドメイン)」といったレポート、および「Marketing Channels(マーケティングチャネル)」の分類において、内部サイトからの参照を除外し、純粋な外部サイトからの流入データのみを集計できますexperienceleague.adobe.comimplementdigital.com。例えば、自社サイト内のページAからページBへの遷移は内部リンクであり、本来であれば「外部からの訪問」ではありません。この設定をすることで、ページBのリファラーにページA(自社ドメイン)が表示されることを防ぎ、本当に外部サイトから訪問があったケース(例: Googleや他サイトからのリンク経由)だけを外部参照トラフィックとして計上します。

内部URLフィルターを設定しない場合の影響

もし内部URLフィルターの設定を忘れてしまった場合、Adobe Analyticsの流入関連レポートにさまざまな不具合や誤ったデータが生じる可能性があります。

  • 自社ドメインからの訪問が「外部流入」としてカウントされる: 内部URLフィルターに自社ドメインを登録しないと、Adobe Analyticsは自社サイトからのリファラーを外部サイトからの参照と誤認してしまいますimplementdigital.com。その結果、レポート上に本来含めるべきでない自社サイトのURLやドメインがリファラーとして表示され、数値が計上されてしまいますimplementdigital.com。これはデータを紛らわしくし、流入元分析を歪める原因となります。
  • 外部流入(検索エンジンやSNSなど)が正しく検出されない: 内部フィルターの未設定や誤設定によっては、逆に外部サイトからの流入がレポート上で検出されなくなるケースもありますexperienceleague.adobe.com。Adobe公式ドキュメントにも「内部 URL フィルターを設定しないと、内部 URL が含まれるか、外部 URL が表示されない可能性があります」と明記されていますexperienceleague.adobe.com。例えば一部のレポートスイートではデフォルトでピリオド(.)のみが内部フィルターに入っていることがあり、この状態では「ドメイン名にピリオドを含む全てのURL」を内部とみなしてしまいますexperienceleague.adobe.com。つまり全てのトラフィックを内部と判定してしまい、GoogleやYahooなど本来外部からの検索エンジン流入ですら内部扱いとなります。その結果、リファラーや参照ドメインのレポートには外部サイトが全く表示されなくなり(すべて内部とみなされ除外されてしまうため)、「Organic Search(自然検索)」などのマーケティングチャネルにもデータが入らなくなる可能性があります。
  • 自然検索流入が「Organic Search」として分類されない: ご質問の核心である 「Google自然検索からの流入がOrganic Searchとして識別されなくなるのでは?」 という点についても、その理解は概ね正しいです。Adobe Analyticsでは、デフォルトの「自然検索(Natural Search)」チャネルは「リファラーが検索エンジンであり、内部URLフィルターにマッチしない場合」に流入元をOrganic Searchとして分類する仕組みがあります。ところが内部フィルター未設定だと、Adobeにとって自社ドメインの区別がつかないため、Google等からの訪問であっても内部と見做されたり、あるいは内部リンク経由の訪問と混同されたりして、正しく「自然検索からの新規訪問」と判定されない恐れがありますimplementdigital.com。実際、「内部URLフィルターの指定以外に自然検索流入のための特別な設定は不要だが、このフィルター設定だけは必須である」とAdobeのコミュニティでも言及されています(※Adobe社員からのアドバイス)experienceleague.adobe.com
    その結果、内部フィルター漏れの場合、Googleからのオーガニック流入がレポート上では “Typed/Bookmarked” (直接訪問)や「参照元なし (None)」といった扱いになってしまい、Organic Searchのセッション数がゼロもしくは過少に計上される、といった問題が起こり得ます。要するに、自然検索や広告、SNSなど各種チャネル別の訪問数・流入分析がAdobe Analytics上で正確にできなくなってしまうのですexperienceleague.adobe.comimplementdigital.com
  • マーケティングチャネルの誤分類: 内部URLフィルターに依存するマーケティングチャネル(例えば「Internal」(内部流入)チャネルや「Referral」(リファラー)チャネルなど)のルールが狂ってしまうため、意図しないチャネル割り当てが発生しますimplementdigital.com。例えば、本来「Organic Search」としてカウントすべきものが「Referral」や「Direct」として処理されたり、逆に内部リンク経由の継続訪問が新たな外部Referralと見做されてしまうなど、チャネルデータの信頼性が低下します。

以上のように、Adobe Analyticsでは内部URLフィルターの設定漏れがデータに直接悪影響を及ぼします。特に流入元分析において「自社ドメインを内部URLフィルターに登録しておくこと」は必須と言えます。これはGA4との大きな違いであり、Adobe Analyticsを導入・利用する際には真っ先に確認すべき設定ポイントですimplementdigital.com

まとめ: クライアントへの説明ポイント

ご質問の内容を踏まえると、クライアントへの説明では以下の点を強調すると良いでしょう。

  • GA4では自社ドメインを特別設定しなくても、自然検索や他サイトからの流入を自動で識別してくれること。
  • Adobe Analyticsでは自社ドメインなど内部と見なすURLを「内部URLフィルター」に手動登録する必要があること。これを忘れると、Adobe側では内部・外部の区別がつかずデータ分類が崩れる旨experienceleague.adobe.com
  • 内部URLフィルター未設定時の弊害として、リファラーレポートに自社サイトが混入したり、本来表示されるはずの外部サイト参照が欠落したりすること、ひいては自然検索流入や他チャネル流入のトラッキングが正確にできなくなることexperienceleague.adobe.comimplementdigital.com。特にGoogleなどからのオーガニック検索流入が正しく「Organic Search」として計上されなくなる可能性が高い点。
  • 結論: 「Adobe AnalyticsではGA4と異なり、自社サイトのドメインを内部URLフィルターに設定しておかないと、流入元別の正確な計測・分析(自然検索/広告/SNS/リファラなどのセッション比較)ができなくなってしまいます」 と説明するのは正しいです。幸い設定自体は管理画面からドメイン名を追加するだけなので難しくはありません。したがって、Adobe Analytics導入時には必ず自社ドメインを内部URLフィルターに登録しておく必要があると伝えてください。

上述のポイントを押さえて説明すれば、クライアントにもGA4との違いや内部URLフィルター設定の重要性が分かりやすく伝わるでしょう。適切な内部URLフィルター設定によって、Adobe AnalyticsでもGA4同様に正確な流入経路別の分析・レポートが可能になります。

参考資料: Adobe公式ドキュメントおよび有識者ブログより、内部URLフィルター設定の必要性に関する記述を引用します。

  • Adobe公式: 「このディメンションを使用するには、レポートスイートの内部 URL フィルターを設定する必要があります。内部 URL フィルターを設定しないと、内部 URL が含まれるか、外部 URL が表示されない可能性があります。」experienceleague.adobe.com(内部URLフィルター未設定時に内部参照が混在したり外部参照が欠落する旨の注意)
  • 有識者ブログ: 「設定漏れがあると問題が生じ得ます。一例として影響が生じるレポートはリファラー、参照ドメイン、マーケティングチャネル等… 流入分析系レポートにて未追加のドメインが出てしまい数字が増える、意図しないチャネル割り当てが生じるという影響が出てきます。」implementdigital.com(内部URLフィルターの設定漏れによるデータへの影響について)
  • Adobe公式: 「一部のレポートスイートでは内部 URL フィルターにピリオド (.) がデフォルト設定されています。このフィルターが存在すると、すべてのトラフィックが内部扱いになります。内部ドメインを追加設定するまで、リファラー関連のレポートは機能しません。」experienceleague.adobe.com(デフォルト設定のままだと外部流入が計上されない例)

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