スコープの違い/命名と枯渇対策/よくある落とし穴
対象読者: GA4+GTM経験があり、Adobe Analytics(AA)実装設計をこれから行う担当者。
目的: eVar/prop/イベント(成功イベント)の役割・スコープ・設計手順を整理し、実装のやり直しやデータ歪みを未然に防ぐ。
このページでわかること
- スコープの考え方(ヒット/訪問/訪問者)と eVar・prop・イベントの正しい役割分担
- 命名規約と設計ドキュメント(SDR)雛形、将来の枯渇対策(スロット消費の最小化)
- よくある落とし穴(持続期間の誤設定・重複カウント・大小表記の揺れ 等)と検証手順
1. まず押さえる:eVar/prop/イベントの役割とスコープ
要旨:
- prop=ヒット単位の“現象の記録”(ページ名、クリック対象など)。パス分析に強い。
- eVar=“値を持続”させて成果にひも付ける(流入、会員属性、キャンペーン等)。帰属に強い。
- イベント(成功イベント)=“数える・合計する”KPI(購入数、売上、CV数、スクロール回数など)。指標そのもの。
1.1 スコープ早見表
ヒット=1回のビーコン送信、訪問=セッション、訪問者=ユーザー(期間内でユニーク)
項目 | スコープ | 代表用途 | 持続/有効期限 | パス分析 | 注意点 |
---|---|---|---|---|---|
prop(トラフィック変数) | ヒット | ページ名、カテゴリ、クリック対象 | なし(都度送信) | ◯(標準対応) | 値は次ヒットへ持続しない。帰属用途は不向き。 |
eVar(コンバージョン変数) | 訪問/訪問者/時間などで設定 | 流入、会員種別、キャンペーン、検索語 | 設定で持続(例:訪問終了まで等) | ×(原則) | 持続設定・割当(Allocation)の誤りで帰属が歪む。 |
イベント(成功イベント) | ヒット(発生時) | 購入件数、売上、CV、スクロール回数 | ― | ― | 重複送信・二重カウントに注意(後述)。 |
1.2 eVarの「持続」と「割当(Allocation)」
- 持続(Expiration):ヒット/訪問/訪問者/期間(日・週・月)など。
例)「流入キャンペーン」は訪問で持続、「会員ランク」は訪問者で持続。 - 割当(Allocation):同一スコープ内で複数値が入ったときのどれを成果に紐づけるか。
代表例:Most Recent(最新上書き)/Original(初回)。
例)同訪問内でA→Bの順にキャンペーンを跨いだ場合、Most RecentならBに帰属、OriginalならAに帰属。
ポイント:eVarは“値を保持して成果に結び付ける器”。持続×割当の設計が帰属の肝。
2. 設計手順:SDR(Solution Design Reference)を起点に
2.1 SDRの基本カラム
種別 | 変数名/イベント名 | 目的/分析観点 | データ定義(型/例) | 取得元(Data Layer/DOM/URL) | 持続/割当 | 値の正規化 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
eVar | eVarXX: marketing_campaign | 流入施策のCV帰属 | 文字列(utm_campaign 等) | dataLayer.campaign | 訪問 / Most Recent | lowercase, trim | 自然検索は“organic”に統一 |
prop | propYY: page_category | パス分析(回遊導線) | 文字列(/mens/shoes など) | dataLayer.page.category | ― | lowercase, slash統一 | トップは“/”で統一 |
event | eventZZ: form_submit | フォームCV件数 | カウント(+1) | クリック時に発火 | ― | ― | 重複送信制御(後述) |
2.2 命名規約(推奨)
- 英小文字+下線(
page_category
,marketing_campaign
,member_rank
)。 - 辞書(用語集)を維持:同義語・大小表記を吸収(“Paid Search”/“paid search”→
paid_search
)。 - プレフィックスで概念を揃える:
usr_
(ユーザー属性)、sess_
(訪問属性)、page_
(ページ属性)、tx_
(トランザクション)
- 値の正規化(Processing Rules):
lowercase
/trim
/N/A→(not set)
などを一律適用。
2.3 データレイヤー優先
- 取得元はdataLayerのルール(キー・型・サンプル値)を先に決め、DOM依存を最小化。
- バリエーションが多いページはテンプレ化(例:記事詳細の共通dataLayerスキーマ)。
3. 枯渇対策:スロットを節約し、運用を長寿命に
目的別の“設計パターン”でスロット消費を抑える。
3.1 1値=1 eVar を乱立させない
- 多態の概念は分類設計で吸収:
例)「施策ID」(eVar)+分類(Classification)で「施策名/媒体/地域」に展開。 - キー=値の汎用eVar:
key:value
を1つのeVarに入れて、分類で展開(将来拡張に強い)。
3.2 propとeVarの住み分け
- パス分析が必要=prop。帰属が必要=eVar。
- 両方欲しい場合はペアで実装(
page_category
を prop+eVar 併用)。- ただし本当に両方必要かをレビュー。レポート要件が満たせる最小構成に。
3.3 イベントの節約
- 単なる比率は計算指標で作る(例:離脱率、CVR)。
- 同種イベントは汎用イベント+分類/ディメンションで表現(例:
event: download
+file_type
)。
3.4 リスト型の活用(必要時)
- 1ヒットで複数値を持ちたい場合はリスト変数(list eVar / list prop)を検討。
- 値の区切り文字・最大値数・正規化ルールをSDRに明記。
4. よくある落とし穴(と回避策)
- eVarの持続・割当の誤設定
- 例:キャンペーンを“訪問者持続×初回割当”にしてしまい、次回訪問のCVまで初回施策に帰属。
- 対策:要件に沿って訪問持続×最新割当などに。公開前にケース別テスト(A→B→CV 等)。
- 購入やフォームの二重カウント
- ページリロードや二重クリックでイベントが再送。
- 対策:イベントの重複防止(一意IDの送信・クリック後ボタン無効化・サーバ側バリデーション)。
- ECはpurchaseID(決済ID)でシリアライズし、同IDの再カウントを防止。
- propで帰属しようとする
- propは持続しないため、CVとのひも付けに不向き。
- 対策:eVarに保持し、イベントに帰属させる。パス分析はprop側で。
- 大小・表記ゆれによる分断
- “Spring_Sale”と“spring_sale”で別集計。
- 対策:Processing Rules で lowercase/trim/正規化を強制。
- データレイヤー未整備でDOM依存
- 仕様変更でセレクタが変わり、計測が静かに崩壊。
- 対策:dataLayer優先。契約(スキーマ)をバージョン管理。
- テスト/本番の混線
- ステージングのビーコンが本番RSIDへ。
- 対策:環境変数で送信先の厳格分離+公開フローで承認必須。
5. 検証の進め方(チェックリスト)
- ビーコン検証:Debugger/Network で
eVar/prop/event
のキー/値、持続が想定通りか(次ページに値が残るか)- イベント重複なし、購入はID単位で一意
- Workspace検証:
- テスト期間セグメントで CV数=イベント数、eVarの割当と整合
- propのパス分析で想定導線が再現される
- ケース網羅:
- 新規/再訪、直帰/複数ページ、施策跨ぎ、フォーム再送、決済戻り
- データ品質監視:
- 設定変更後は数日トレンド監視。異常閾値の通知(急増/急減)を用意。
6. 設計テンプレート
6.1 命名規約(抜粋)
・英小文字+下線(snake_case)/半角英数のみ
・ディメンション名は“概念_属性”(例:campaign_name, page_category)
・イベント名は“動詞_対象”(例:submit_form, add_to_cart)
・値の正規化:lowercase, trim。未設定は (not set) に統一
6.2 eVar設定の指針(例)
流入キャンペーン:訪問持続 × Most Recent
会員ランク:訪問者持続 × Most Recent(ログインで上書き)
検索語:訪問持続 × Most Recent(内部検索/外部検索で区別)
6.3 イベント設計の指針(例)
purchase(購入件数):+1(シリアライズ必須)
revenue(売上):数値送信(通貨・小数点ルールを統一)
form_submit(送信):+1(送信成功タイミングのみ)
scroll_depth(スクロール):25/50/75/100%(閾値はサイト共通)
7. 図解アイデア
- 「prop→パス分析」「eVar→帰属」の分業図:
ヒットごとにprop.page_category
、訪問開始でeVar.campaign
を保持 → イベント(purchase)発生時に eVar へ帰属。

- 持続×割当マトリクス:
行=持続(ヒット/訪問/訪問者/期間)、列=割当(最新/初回)。ユースケースをセルに配置。

8. まとめ
- propは“今このヒットの状況”、eVarは“継続して成果に結び付ける文脈”、イベントは“KPIのカウント”。
- 持続(Expiration)×割当(Allocation)の設計が帰属精度を左右。
- 枯渇対策は「分類の活用」「汎用eVar化」「計算指標優先」でスロット節約。
- 導入時はSDR作成→dataLayer設定→正規化→検証の順で、やり直しコストを最小に。
付録:SDR(Solution Design Reference)テンプレ(CSV想定カラム)
type,name,purpose,data_definition,source,expiration,allocation,normalization,notes
eVar,eVarXX marketing_campaign,流入CV帰属,string(utm_campaign),dataLayer.campaign,visit,most_recent,lowercase|trim,自然検索はorganic
prop,propYY page_category,パス分析,string(/mens/shoes),dataLayer.page.category,-,-,lowercase|trim,トップは/
event,eventZZ form_submit,フォームCV,count(+1),click(trigger),-,-,-,重複防止
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