Looker StudioへのGemini統合と提供状況
Googleの生成AIモデル「Gemini」は、Looker StudioのPro版に統合され、データ分析支援機能「Gemini in Looker」として提供されています。これは、従来のLookMLベースの「Looker」本体とは別に、Looker StudioのセルフサービスBI環境にAIアシスタント機能を組み込むものです。Gemini in Lookerは2024年からパブリックプレビュー段階で提供されており(2025年7月現在もプレビュー版)、正式リリース前の「Pre-GA(一般提供前)」として限定的なサポート・利用条件の下で公開されています。プレビュー期間中は追加料金なしで試用できますが、正式版リリース後は有償オプションとなる可能性があることが明記されています。
自然言語によるチャート作成・レポート要約生成などのAI機能
Looker Studio Proで有効化したGemini in Lookerにより、以下のような生成AI機能が利用可能です(※Looker Studio無料版では利用不可)。
Conversational Analytics(会話分析) – データに対して自然言語で質問し、瞬時に回答を得ることができます。
ユーザーが「○○の売上推移を教えて」等と聞くと、Geminiが該当データを分析し、Looker Studio上にチャートやデータ表を自動生成して回答します。
回答には質問内容に応じたグラフと、AIによるデータの解釈・要約テキストが含まれ、対話的にデータ探索を進めることが可能です。
生成されたグラフはそのままレポート上に挿入したり編集することもでき、自然言語でチャート作成・カスタマイズが行えるよう設計されています。
レポート内容の要約・説明文の自動生成 – Geminiは分析結果の解説や要約を自動生成することも可能です。Conversational Analyticsの回答テキストとして簡潔な解釈が示されるほか、特に「スライド自動生成」機能ではチャートの内容を説明するナラティブ文章を生成します
。
これはLooker Studioレポート内のグラフや表を読み取り、重要な傾向や数値を文章で説明するものです。例えば売上ダッシュボードからスライドを生成すると、各グラフ画像とともに「この期間の売上の77%は直接流入によるものです…」といった分析コメントが自動で挿入されます。
このようにレポートの要点を文章化することで、データストーリーの共有やレポートの理解促進に役立ちます。
Google Slidesへのエクスポート – Gemini in Lookerの目玉機能の一つが、レポートからのスライド自動生成です。Looker Studioのレポート画面から「Gemini」サイドパネルを開き、「スライドを生成」ボタンを押すだけで、現在のレポートのビジュアル要素をまとめたGoogleスライド資料が出力されます。
生成されるスライドにはレポート内のグラフや表が画像として貼り付けられ、各グラフごとにAIが生成した解説テキスト(サマリ)が追加されます。
GA4従来はレポートのスクリーンショットを手作業で貼り付けて資料化していた作業が、この機能によりワンクリックで自動化されます。
なお現時点では、複雑な可視化を含む場合にサマリ生成ができないケースも報告されています(「一部のビジュアライゼーションでサマリを提供できません」というエラーが発生し文章生成がスキップされる)。これはプレビュー段階の制約であり、グラフの種類や要素数によって発生する不具合と考えられています。
エラーが出ない場合は期待通り各グラフの要約コメントが挿入されます。
計算フィールド支援(Formula Assistant) – レポート上で新たな指標や計算項目を作成する際、自然言語で計算式の内容を指示すると、Geminiが適切なLooker Studio用の計算フィールド(フォームラ)を自動生成して提案します。
例えば「売上からコストを引いた利益を計算したい」のように入力すれば、対応する数式をLooker Studioの計算フィールドとして提示してくれるため、複雑な関数や構文を覚えていなくても高度な指標の作成が可能です。
以上の機能はすべてプレビュー提供中であり、2024年のGoogle Cloud Next等で初公開された後、順次ユーザー検証が行われています。
Looker Studio Proの必要性と無料版との違い
Geminiによる生成AI機能を利用するにはLooker Studio Proの契約が必要で、無料版では利用できません。Looker Studio ProはGoogle Cloudが提供するエンタープライズ向け有償版であり、組織のGoogleアカウントとGoogle Cloudプロジェクトに紐づけてサブスクリプションを購入・有効化します。現在、Googleは一定の条件下でLooker(旧Lookerプラットフォーム)利用企業に対し、Looker Studio Proライセンスを追加費用なしで提供する施策も行っています。
つまり、既にLookerのライセンスを持つ場合は追加コストなくLooker Studio Pro(およびGemini機能)を使えるケースがあります。
一方、個人のGoogleアカウントや無料版環境ではGemini in Lookerは利用できず、必要に応じてPro版へのアップグレードが求められます。
機能を有効化する条件(アカウント種類・プロジェクト設定・権限など)
Gemini in Lookerの機能を使うための前提条件として、まず組織でLooker Studio Proを契約し、それが紐づくGoogle Cloudプロジェクトが用意されている必要があります。その上で管理者権限を持つユーザー(Google Workspace管理者や該当プロジェクトのオーナーなど)が、Looker Studioの設定画面からGemini機能を有効化する必要があります。
具体的には、Looker Studioにサインイン後、ユーザー設定の「Gemini」タブを開き、対象プロジェクトについて「Gemini in Looker」を「有効」に切り替える操作を行います。この際、プレビュー機能であるGeminiを利用するために「Trusted Tester(信頼できるテスター)機能」を有効化する必要があります。
Trusted Testerを有効にすると、Gemini利用時の追加データ使用条件に同意したものとみなされ、Geminiの高度な機能(データのAI解析やコードインタプリタ等)が使用可能になります。
権限面では、Gemini機能を利用するユーザーに適切なロール(役割)やアクセス権が付与されていることが重要です。例えば、Looker Studioレポート上で計算フィールド生成を使うにはそのレポートの編集権限(Editor権限)が必要であり、スライド生成を使うにはレポートの閲覧者または編集者であることに加え、出力先のGoogleスライドに対する編集権限が必要です。
またConversational AnalyticsでLookerのセマンティックモデル(LookMLモデル)をデータソースとして対話クエリを行う場合、背後のLookerデータモデルに対して「gemini_in_looker」あるいはデータアクセス権(access_data権限)が付与されたLookerロールがユーザーに割り当てられている必要があります。
これは、Looker Studio上からLooker本体のモデルに問い合わせるケースでの制限ですが、Conversational AnalyticsはBigQueryやスプレッドシートなど様々なデータソースに対応しており(Googleスプレッドシート、CSV、BigQuery、LookerのLookMLモデル等をサポート)
、データソースに応じて必要なアクセス権をユーザーが持っていればNL質問が可能です。なお、Looker Studio Pro環境ではレポートやデータソースに「プロジェクトフォルダ」が導入されており、対象のレポートがPro対象のプロジェクト内フォルダに配置されていることも重要です(Pro管理外のレポートではGeminiオプションが動作しない場合があります)。
以上をまとめると、組織向けGoogleアカウント+Looker Studio Pro契約+管理者による機能有効化+適切なユーザー権限付与という条件が整えば、Geminiの各種AI機能を利用できるようになります。
機能の提供段階・利用制限の有無
前述の通り、Gemini in Lookerは現在パブリックプレビュー段階にあり、正式版ではありません。Googleのサービス提供ステータス上は「Pre-GA(General Availability前)」扱いとなり、プレビュー機能に関する追加利用規約(Trusted Testerとしてのデータ使用条件など)が適用されています。プレビュー提供中のためサポートは限定的で、動作や出力結果に予期しない挙動が発生する可能性があります。実際、ユーザー検証では前述のスライド要約生成が一部のグラフでエラーになるケースや、会話分析の応答品質にばらつきが見られることが報告されています。
これらは現在調整中の箇所であり、Googleも2024年末~2025年にかけてアップデートで改善を図っている状況です(例えば2025年4月にスライド生成機能の不具合修正が実施されたとの報告あり)。利用制限としては、1回の問い合わせで処理できるデータの量や質問の複雑さに事実上の上限はありますが、公式には細かなクエリ数制限等は公表されていません。ただし大量のデータを扱う際の応答時間が長くなったり、質問内容によっては「回答できません」と返される場合もあります。
現在はあくまで試用段階の位置付けであり、ユーザーは生成された分析結果や説明文について内容の検証(バリデーション)を行いながら活用することが推奨されています(誤った分析や不正確な文章が出力される可能性があるため)。
対応言語と日本国内からの利用可否
対応言語について公式ドキュメントでは明確に言及されていませんが、Geminiは多言語の大規模モデルであり、実際に日本語で質問を入力しても問題なく応答が返ってくることが確認されています。
例えばConversational Analyticsで日本語の質問を投げると、意図を正しく汲み取って応答(グラフや回答文)を生成します。ただし現時点では既定の出力言語は英語となっているケースが多く、特に自動生成されるサマリ文章はデフォルトでは英語で記述されます。
日本語での結果が必要な場合、プロンプト(質問文)内であらかじめ「日本語で答えて」と指示したり、生成後にGeminiに翻訳させることで対応可能です。実際に日本語で「結果を日本語で説明してください」と追加で問い合わせしたところ、英語の説明を日本語に言い換えた回答を返してくれることがユーザー検証で報告されています。
UI上の表示言語についてはLooker Studio自体が日本語を含む37言語に対応しており、Gemini機能のメニューやボタンも日本語化されています(例えばConversational Analyticsは「会話分析」と表示)。
日本国内からの利用可否については、Looker Studio Proの契約さえあれば基本的に地域による利用制限はありません。2024年9月のパブリックプレビュー開始時点から日本のGoogle Cloudユーザーにも提供されており、ソフトバンクやクラウドエースなど国内企業のブログでも検証記事が公開されています。
現在、日本を含むグローバルでLooker Studio Proを導入している組織であれば、管理者がGemini機能を有効化することで社内ユーザーがその恩恵を受けられます。日本語データを扱う場合でも、前述の通りモデル自体は日本語を理解・生成できるため、大きな障壁なく利用可能です(ただし固有名詞や専門用語の扱いなど、一部チューニングの余地はあるかもしれません)。
総じて、2025年7月現在、Looker StudioにおけるGemini(生成AI)機能はプレビュー版ながらも日本語環境で利用できる状態にあり、今後の正式リリースに向けて機能改善や安定性向上が進められている段階と言えます。
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